第40話

取り囲んでいた30人を秋信はあっさりなぎ払ってしまった。


澤部と蒼は険しい顔で傍観している。



今は俺がるみ、秋信が大地を相手している。




秋信の体力がそろそろきつくなる。



秋信は自分で自分の体を制御することができない。

だから、常に筋肉を弛緩させるような振動をするチョーカーをつけていた。



必要な場面になったら俺が外すことになっている。




言ってしまえば、常に火事場の馬鹿力を発揮しているようなものだ。

それでは体力も体も持たない。




ーーーーパァンッ!





グラリと体が傾いた。

足を打たれたらしい。


これは、また秋信に怒られるな。



撃ったのは澤部か。



蒼も秋信に銃口を向けている。





「秋信!」





撃たれた俺を呆然と見ていた秋信が、ハッとしたように飛びのいた。

秋信がいた場所に銃痕ができる。




「往焚っ!」


「来るな!」




秋信は、俺のことになるといつも取り乱す。

ずっと一緒にいたから、俺らはお互いを家族のように思っている。



俺がしっかりしなければ。




いつだって俺を守るために秋信は傷つく。





澤部が銃を向けたまま近づいてくる。

それを睨みつけながら、必死で思考を巡らせた。



打開策。

何か、ここを切り抜けるのに必要な…



俺に銃口が向いているせいで秋信が動けない。

大地に腕を捻りあげられ、うつ伏せに組み伏せられているのが見えた。



いつも、失敗するのは俺のせいだ。


歯噛みしているだけではダメだと思いながら、有力な案が浮かんで来ない。



焦るな、落ち着け。

大丈夫。





ーーーーコツ、コツ





かすかな足音…

まさか、増援が⁉︎



この状況でそれは絶望的だ。




ーーーーコツ、コ……





途中で足音が消えた。

立ち止まったのかと思ったが、近くに誰かが立ち止まった様子はない。




それでわかった。

誰が来たのか。






絶望的だったこの状況が覆る。




スクッと立ち上がり、秋信に近づく。



「往焚さん?」


「動かないでください!撃ちますよ!」



ガチャ、とセーフティーの解除音が聞こえた。

それで足を止めない。


大地は秋信を離さない。




「秋信。……帰るぞ」


「……そうですね」





4人が顔を歪めた。

澤部とるみが俺たちに向かって引き金を引こうと指を引く。






ーーーーパァンッ!






銃声が2つ、轟いた。

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