煙 Ⅱ【完】 原文

第11話

やっと私の涙が止まった。

心配そうに私を見つめる湊を見て、ほんの少しだけ笑ってしまったけれど…。

ーーーーピコン

秋信のパソコンが鳴る。

そのまま秋信がパソコンを開いて操作しているのを、ぼんやりと眺めた。

「……なぁ。

お前、やっぱなんか変じゃねぇ？」

「ん…？変？」

「……気のせい、か？」

湊は何かを考え始めた。

往焚と開理は、秋信のパソコンを覗き込んでいる。

《みっなさぁーん！こんばんはぁー！

影さんでーす！》

突然画面が切り替わり、映像が流れ始めた。

つけていなかったテレビも勝手についている。

流れている映像は同じものだ。

《なんかー、まだ俺の正体わかってないみたいだね。

拍子抜けだなぁ〜。

さっさと解析してくれないとー、次動けないんだけどー》

全員の顔が険しくなる。

秋信は録画設定をしているようだ。

《ま、さっさと解析してねー。

じゃないと、待たないで電子機器全部ジャックしちゃうよ？

あ、まぁそんなのはどうでもいいとしてー…

予告通り15時に3人事故ったねぇ？

これで俺の言葉が嘘じゃないってわかった？》

ケタケタと笑う、影。

《あー、次の標的はここー！》

影は、地図の一点を指差す。

そこは確か、常に紛争が絶えない危険地帯。

《ここの紛争、邪魔なんだよね。

だから、1週間で終わらせまーす。

ついでにここの紛争で衝突してるヘッド2人、殺しまーす》

にぃっと影の口元が歪む。

それと対照的に画面を見ている4人の顔が苦渋に歪む。

あそこの紛争でぶつかっているヘッドーーーボスは、表社会でも顔がきく大物だったはず。

政治にも関わっているような重要人物だ。

《それじゃあまたねー、人間ども？》

ブツン、と映像が消えた。

「秋信、相手の正体を探れ。

俺はこれを撮った場所を見てくる。

これ…ここの近くの空きビル、だよな？」

「了解。

俺たちもよく潜入で使ったましたから、間違いないです。あの空きビルですね」

「秋信、俺も手伝うよ」

3人は、映像が切れた瞬間に動きだした。

湊はじっと何かを考えている。

ーーーーズキン

頭が痛い。

割れそうだ。

ここ最近頭痛が酷い。

「.…お前、何か気づい……って、どうした⁉︎」

視界が暗転する。

あー、ダメだなぁ。

なんで大事な時に。

これじゃ、私の目的なんて簡単にバレてしまう。

耐えようとして、耐えきれずに湊の方へ力なく倒れこむ。

さっきは笑ってくれたのになぁ。

また苦しそうな顔してる。

なんで、そんな顔するの？

体から力が抜けていく。

瞼が重い。

脳裏に１つの光景が浮かぶ。

それと同時に、さっきの湊の笑顔も浮かんだ。

私、頑張るよ。

頑張るから。

だから、

お願い。

ーーーー私を、殺して