明石真莉のプロファイル【推理記録】

呉根 詩門

異人館のユダ【裏切りの使徒】殺人事件

Overture 〜Zero〜

 僕、小林拓磨と名探偵と言うべきか……それとも疫病神と言った方が正解かもしれない明石真莉との出会いは、些細なことからだった。

 たまたま、僕と真莉は国立大の文化人類学と言う、普通の人から見れば何の勉強してるの?と言う訳がわからない学部に所属していた。

 ここで文化人類学のなんたるかを語ってもいいけど、それだといつまで経っても話が進まないので割愛させてもらう。

 まぁ、簡単な話、同じ大学の同じ学部に所属して良く教室で一緒になったと言う話だ。

 たまたま、同じ講義で席が隣なった時……その時の僕は、まだ真莉の事を随分綺麗な女性だなぁと思っていたのだけど……そう、僕には真莉が化けの皮を被っていたなんてこれっぽっちも思ってなかった……何度振り返ってこの時のやり取りを後悔したことかわからない。

 それで、その時のやり取りが


----

 僕が早朝の講義が始まる前に席に着いて東野圭吾の「放課後」を読んでいると


「君、ミステリー好きなの?」


 綺麗なストレートロングの髪と縁無し眼鏡が印象的ないかにもインテリな女性が隣に座って声をかけてきた。


 僕は、ちょっとドギマギしながら本から顔を上げて女性に向けると


「うん……どっちかと言うと好きな方かもしれない……マニアじゃないけどね……」


 と、僕が答えたのを満足した様に何回か頷きながら


「それじゃあ、私がミステリーの謎解きの仕方教えてあげよっか?」


 僕は、その女性があまりにも積極的に語ってくるので黙って首を縦に振ると


「ミステリーの謎解き基本は5W1Hよ!

 これさえ押さえておけば大概は解決するわ!

 5W1Hは、判るよね?」


「それくらいは、わかるよ。いつ、どこで、誰が、何を、どうして、どうやったか?

 だよね?」


「そうそう!

 実は私、君のようなミステリーの興味のある人を探していたんだ!

 あ!

 ごめん、名乗ってなかったわね。私は、明石真莉って言うの。君の名前は?」


「僕の名前は、小林拓磨。探していたって言うのはどうして?」


 真莉は、腕組みしながら難しい顔で


「うーん……なんて言うのかな?

 私にとってのワトソン君?

 を、探していたのよ」


僕は、その時その言葉の意味は、全く理解できなかった。今にしては嫌とわかるけど……


「拓磨君、実は週末予定空いてる?一緒にきてもらいたい所があるんだけど……?」


と、美人にせがまれる様に見つめられては、首を横には振れず


「う……うん、わかった」


「それじゃ、携帯番号交換しましょう!

 後で場所と時間連絡するから!

 後、着替えも2、3日用意してね」


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その来てもらいたい所が僕と真莉が一緒の初めての事件


「異人館のユダ【裏切りの使徒】殺人事件」


が起こった場所となった。

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