アムール・リアン・フルール〜大国で働く町娘〜

天音(そらね)

1章 私たちの学生生活

第1話

「んぁ〜終わった〜!」

私は大きく伸びをして帰る支度をする。

「ふふっ。さくもう帰り支度をするの?」

「しお!だっていつまでも学校なんかいたら息が詰まる!早く帰ろ!今日はふわふわパンケーキ〜!」

「ほんと食いしん坊なんだから。」


私は里中咲良さとなかさくら。花宮高校2年生。みんなからは咲って呼ばれるんだ。元気と運動だけが取り柄だね!って言われるけどそんなことはない!頭だって…平均より下。いやいや料理とか裁縫だって!…焦げるし、糸が絡まって大変な事になる。あれ?私ってやっぱり元気と運動以外はダメダメ!?


まぁそれは置いといて私には幼なじみがいる。大好きな親友なんだ!家が近くで小さい頃から一緒だった。まずはしお!佐藤詩音さとうしおん。同じ花宮高校2年生。とっても優しくて、頭が良くて、頼りになるんだ!なんて言ってもしおはとっても美人なの!アイドルにスカウトされてもおかしくないくらい!それにこの性格だからすごいモテるの!老若男女すべてにね!すごいでしょ?噂ではファンクラブがあるとかないとか。

あともう一人、

「おっ?今から帰りか?」

「ん?あっ!こう!今から部活?私たちはね〜今からパンケーキ食べにいくの!」

「おう。…また甘いもの食べにいくのか?太るぞ。」

「甘いものは大事なの!それに太らないようにするし!運動は得意だからね!」

ふふんと得意げにすると、

「運動だけだろ。」

と笑われた。

ム、ムカつく!まぁいいもん。このあとパンケーキが待ってるんだから!

あっ!こほん。さっき香って呼んだ人が、紫丁香花しちょうこうか。香も同じ花宮高校2年生だよ!剣道部に入っていて、次期部長候補なんだって!少し無愛想だけど、優しくて、面倒見が良くて、ちょっとムカつくとこもあるけどいいやつだよ!それでしおのいとこで、すごいイケメンなんだって!私はあんまりそういう風には見えないんだけど、女子のクラスメイトや先輩には

「あんなイケメンと幼なじみなんて羨ましい!」

「私も話しかけられたい!」

なんて言われる。これはしおの場合でも、男子に言われるけどね。だから香もモテモテなの!

体育や部活の最中、香の応援してるみんなを見かけるよ!香は運動神経もいいから、どの競技でも上位なんだ。たまに負ける時はすごく悔しいけどね!!部活に入る前はいろんな部活に勧誘されたんだって。あと頭もいいから、こんな好条件モテないはずがないよ!って食い気味でみんなに言われた。

二人ともモテモテだから一緒にいるとすごい目立つんだけど、優しい二人が大好きなんだ!

「ふふっ。じゃあ咲行こうか?香も部活頑張ってね。」

しおが笑いながら言った。

「むぅ〜。しおまで!明日の体育見てろ!絶対香より得点入れて勝つんだから!行こっ!しお。」

「はいはい。俺も負けないからな。…気をつけて行けよ。二人とも。」

「うん。また明日ね。待って咲!」


「…ふっ。ほんと騒がしいやつ」

香は苦笑しながらボソッとつぶやいた。



「もう!ほんと一言多いんだから!ねぇしお?」

パンケーキのお店に向かう途中、私はしおに怒りながら言った。

「そうだね。女の子に向かって太るぞって言うのは良くないね。」

しおはニコニコしながら言った。

「だよね!香のやつ。明日絶対勝つ!…ところで何食べる?私はチョコレートかな〜。やっぱりイチゴ?」

「ふふっ。さすが咲ね。切り替えが早いわ。」

「ん〜?なんか言った?」

「ううん。何でもない。両方頼んで半分こしようか?」

「えっ!いいの?ありがとう〜しお大好き!」

(やっぱり咲には甘くなるわ。)

ご機嫌の咲と歩きながらしおは苦笑した。



翌日

「咲!咲良!起きなさい!遅刻するわよ!詩音ちゃんも香花くんも待ってるんだからね!」

「う〜ん。何〜?……えっ!やばい!」

お母さんに起こされて時計を見ると、8時を指していた。

「ごめん!しお!香!すぐ準備する!」

慌てて下に降りて待っていた二人に言うと急いで準備に取りかかった。

「ごめんなさいね。いつもいつも。」

「いえ。大丈夫です。まだ歩いて行っても間に合いますし。」

「ほんと優しいわね。詩音ちゃん。」

咲のお母さんと話していたら、数分も経ってないうちに咲が降りてきた。

「お待たせ!ごめんね!あっお母さんおにぎり持ってくね!」

「えっ?こらっ!歩きながら食べないの!」

「ごめんなさーい!」


私たちはいつも朝は一緒に登校している。

「朝から騒がしいなお前は。」

「ごめんね。香いつも。」

「もぐもぐさせながら言っても反省が見えないぞ。」

「咲、ほっぺにご飯粒ついてるよ。でも咲はいつも起きてから出てくるまで、時間がかからないからそんなに待ってないよ。」

しおはほっぺについたご飯粒を取りながら言った。

「…!しお大好き!」

私はしおに抱きついて言った。

「おいしお。あんまり咲を甘やかすな。時間はかからないが、もう少し身だしなみを整えてからこい。」

確かに髪の毛はボサボサのままだ。

「髪の毛は行きながらでも整えられるからいいの!もう!香が身だしなみを整えろって言ったのにぐしゃぐしゃにしないで!…あれ?香。手、どうしたの?」

私の頭を乱暴に撫でて髪の毛をぐしゃぐしゃにするのを怒りながら、香の右手を見るとかすり傷が付いていた。

「ん?あぁ。これは昨日部活が終わって帰ろうとした時に、近くを通ったやつがこけそうになってたんだ。支えたんだが、持っていたバックのキーホルダーがかすった時に付いたみたいだな。」

「へぇ〜!やるじゃん香!」

「香。これちゃんと消毒したの?かすり傷でもちゃんとしないとダメよ。」

しおはカバンから消毒液を出しながら言った。

「あっ!私絆創膏持ってるからあげようか!」

私がカバンから絆創膏を出すと、

「咲が!?お前そんなの持ち歩いてたのか?」

「私が持ち歩いているわけないじゃない!しおが『咲はよく怪我するんだから持ってなさい。』っていつも持たせてくれるの!」

えっへんと自信満々に言うと、

「おい。自信満々に言う事じゃないぞ。それにしおはお前の母親じゃないんだからな。」

と呆れたようにため息をついた。

「咲は何でも全力でやるのはいいんだけど、自分のことはそっちのけで体を心配しないから怪我が多いのよね〜。もう少し体のことを考えてくれたらいいんだけど…。だから咲用で救急セットはいつも完備よ。…はい。これで終わったわよ香。咲、絆創膏貼ってあげて。」

しおも呆れたようにため息をついて、私に言った。

「えへへ。いつもごめんねしお。でもしおのおかげで私はいつも元気いっぱいだよ!…はい香。手、出して!」

笑顔で言うと香もしおもやれやれと苦笑した後、香は私に手を出した。

「…よし!これで治療完了!…ん?香こんなところにあざあったっけ?」

「今更何言ってんだ。しおにもあるだろ?」

しおと香には、右手の親指の付け根らへんに花みたいな形をしたあざが生まれた頃からある。

「うん。そうなんだけど。…しお!ちょっと手見せて!」

「…?いいけど。」

「ほら!しおは花の中心には何もないけど、香は花の中心にハートがある!」

しおは5枚の花びらの中心には何もないが、香は5枚の花びらの中心にハート型のあざがあった。

「そういえばそうだな。…しかしよくこんな小さいの分かったな。」

「昨日しおのあざ見た時と香のあざが違うように見えたから気になって見比べてみたら気づいた!」

「ほんとね〜。全然気づかなかったわ。」

「私観察眼がいいのかも!」

「たまたまだろ。」

「たまたまでも見比べて気づいたんだから!」

「たまたまは観察眼がいいとは言わない。」

「なに〜!」

咲と香は言い合いを始めた。そんな二人を見て、

「ふふっ仲がいいわね。」

と、しおは笑みをこぼした。



「きゃ〜!香花くんだ!朝からラッキー!」

「あっ!詩音様だ!今日も美しい!」

「香花様〜!」 「詩音ちゃ〜ん!」

学校に着くと、…相変わらずすごい歓声だ。

「相変わらずすごいね…。二人とも…。」

「別に嬉しくない。」

「そうね。ちょっと恥ずかしいし。」

「そうなんだ。」

私たちは雑談しながら昇降口に向かっていると、

「…あの!」

「ん?どうしたの?」

私は話しかけてきた女の子に声をかけた。

(後輩かな?)

「あ、あの…こ、香花先輩に話があって…。」

「香?」

その子は顔を真っ赤にしながら話していた。

私が聞くと、その子はコクリとうなずいた。

「香〜!ちょっときて!この子、香に話があるんだって!」

「何だ?…あぁ君は昨日の。」

「は、はい!昨日はありがとうございました。こ、これお礼です。…じゃあ失礼します!」

後輩ちゃんは香にお礼を言って何かを渡すと走り去って行った。

「ん?あれ誰?何貰ったの?」

「話的に登校中、香が言っていた昨日転びそうになったところを助けた子じゃない?」

私が不思議がっていると、しおが答えてくれた。

「ああ。その例の子だ。…中身はクッキーだな。」

「うわぁ〜!美味しそう!後輩ちゃんお菓子作り上手なんだ!」

「…やらないぞ。ところで何だ後輩ちゃんって。」

「ケチ。え?私たちの後輩だから後輩ちゃん。名前知らないし。」

「またそんな安易な…。」

「いいじゃない!とりあえず教室行こ!」

「あっ!ちょっと待て咲!」

「しおも行こ!」

「は〜い!今行くよ。」


ガララッ

「みんなおはよ〜!」

「咲、おはよう!香花くんと詩音ちゃんは?」

「後ろにいるよ!」

私たちは2年2組。みんな仲良しクラスなんだ!まぁしおと香はクラスでもアイドル的存在なんだけどね。今も教室入ってすぐ囲まれてる。

「おーい!席につけ!HR始めるぞ〜。」

みんなが先生の号令で席に着いたのを確認してからHRが始まった。

「みんなも知っての通り、来週は体育祭だ。そして2ヶ月後は学園祭があるから各自準備しておけよ。」

「「「「は〜い!」」」」

「じゃあHR終わりっ!」

「起立、礼!「「「「ありがとうございました!」」」」」


「よし!しお!香!絶対勝つぞー!」

「はぁ…元気だな。」

「私は運動は得意じゃないから咲、香頑張って。」

もちろん!と胸を張って、しおに返した。

(そういえば、今日の体育勝負してたんだった!)

「香!その前に今日のバスケ得点が多い方が勝ちね!」

「…はいはい。」



ダンッダンッ

「咲!パス!」

「OK!…入れ!…やった!スリーポイント!見たか香!」

ふふん!と得意げに香を見た。

「やるじゃねえか。まぁ俺も負けねぇからな。見てろ。」

香はそう言ってコートに入って行った。

「香花!そっちだ!頼む!」

「あぁ!まかせろ!」

香は目の前にきた相手チームのボールを素早くとり、そのままスリーポイントシュートを決めた。

「…きゃ〜!!香花くんカッコいい〜!!」

「香花様〜!こっち向いて〜!!」

香がゴールを決めると見ていた女子達が歓声を上げた。

「…くっ!香も決めたか!」

悔しがりながら香を見ると、口をパクパクさせていた。

「み、た、か…?」

むっとした顔をしながら香に向かってグーサインをすると、ぶはっと吹き出して私に向かって舌を出した。

「…!…?」

(なんで今ドキッとしたんだろ?走った後に急に止まったからかな?)

「咲〜!お疲れ様。どうだったの?勝負は。」

「しお!それがスリーポイント決めたのに、香も決めてさ〜!引き分けなんだよね〜。」

「そうなの。…はい、お茶。」

「ありがと〜!…あっ!今私がしおに入れてもらったのに!」

しおからお茶を受け取って飲もうとすると、いつの間にか来た香がお茶を取って飲んでしまった。

「…うまい。ごちそーさん。」

「もう!香のばか!…まだ負けてないんだからね!」

「ふっ。…じゃーな。」

私が文句を言うと、香は私に背を向けて手を振りながら歩いて行ってしまった。

「絶対勝つ…!」

「まあまあ。はい、お茶。」


そのあとの勝負も結局引き分けのままだった。


「あぁ〜!くやしい!」

「ふん。まだまだだな。」

「何言ってんの。引き分けじゃない!香もまだまだよ!」

「どっちも同じだわ。」

しおは呆れながら言った。

「体育祭まで延長よ!」

「…まだやるのか。」

「クラス対抗なのに、咲と香が戦ってどうするの。」

終わりがあるのかわからない戦いにため息をつくしおだった。

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