夢の神様は僕が死んだことを夢にする

なりなり

エピローグ

「死にたい」


時刻は深夜、外に歩いている人間はもうほとんどいない。

僕は自分の住むアパートからひっそりと抜け出して、階段を下りて外に出る。

僕は最期に外の空気を目一杯吸うと、空っぽな自分に大きくため息をはいて、

最寄りの駅へと向かう。


灰色に見える景色を見ながら、がらりとした公道を歩く。

気持ちの悪い自分語りを脳内でしながら、僕の人生を振り返っていた。


僕の人生は空っぽだった。

いろんな人にいい顔振りまいて、いいようにこき使われて、なのに文句ひとつ言わずに、こんな卑屈な性格なのに、いつかきっとこの努力が報われるって信じていた。



そもそもこれは努力なのだろうか?


未来に不安ばかり残って、自分が楽しくしている姿が想像できなくて、いつしか人に優しくすることさえやめてしまった。

そんな僕に残ったものなんてほとんどなくて、家族も、友達も、顔見知りの人間さえもう周りにはいない。


そんな自分の人生の振り返りもさておき、気づけば最寄りの駅についていた。


冷たい風が容赦なく僕に襲い掛かる。


残った最後の電車が、もうすぐ目の前を通り過ぎるとアナウンスが鳴り響く。


僕はそのアナウンスを耳にしながら、地面に響く轟音を感じて、黄色い線の外側に立つ。



電車が来たタイミングで、僕はその一歩を踏み出した。


最後に見えたのは、腑抜けた顔をした電車の運転手の目だった。

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