ちょ待てっ!? ……それは勘違い、ただの勘違いだからっ!?
なつめx2(なつめバツに)
第一話 こういう時、何て言うんだっけ?
「落ち着けっ!?」
俺はできるだけ冷静に声を掛けた。
「落ち着いてるにょ~♡」
そう言って目を瞑り唇を突きだして俺に迫ってくるのはクラスメイトの
どうしてこうなったっ⁉
今はまだ日は暮れていない。多分。
たぶん、と言うのは時間の感覚がバグっているからだ。
体育の授業をしていた。本日ラストの授業だ。
体育の授業は男女別々である。
それが何かのタイミングが重なって俺と舘野が授業の終わりに体育準備室で顔を合わせた。そこまでなら(数少ない)偶然と言えただろう。
しかし、用事を済ませて(二人とも体育用具を置きに来ただけなので)体育準備室を出ようとしたのだが……
何故か、体育準備室の重い鉄扉が開かない。
マジか?
二人ともパニくって大声で叫び、体育準備室の鉄扉を、がん、がん、叩いた。
いや、俺だけだったら、多分……パニくる前に、さっさ、と諦めていただろう。
俺の人生には〝良くあるコト〟だからね(笑)。
まあ、誰かのイジメで閉じ込められた可能性も無くはないが……俺如きにそこまでするか?
ああ、そう言えば……何故か最近、
いや、実際は……俺の隣の席の
何度か俺が席を移動する旨を伝えたのだが、何故か、三人から反対されたのだが。解せない。
そして、俺を含めて四人とも自分で弁当を作っている事が判ると、いつの間にか皆んなで『おかずの交換』をするのもルーティーンになっていたのだった。
それだけのコトだし、彼女たちクラスのカーストトップ3との間にそれ以上の交友関係が生まれる訳もなかった。
ただ、何故か(多分、モブ虐めだ)、今年から4~6人で班を作り週一で
いや、今はそれは必要な情報か?
と、なれば……友人など皆無の俺如きが〝居ない〟コトなどクラスに気にする人間は皆無だろうから、これは一晩ここで明かすしかないだろう。
いや、いや、いや、待てよっ?
クラスのカーストトップ3(2位か3位かは明言を避けるが)の一人がここに
俺は隣で体育準備室の重い鉄扉に、がっくり、とへたっている舘野を見た。
「舘野さん……媛乃木さんとか川俣さんとかと一緒じゃなかったの?」
(川俣は、媛乃木、舘野と並ぶクラスのカーストトップ3(2位か3位かは明言を避けるが)の一人だ。)
「あーし、余計なコト言った……かも?」
「…………ん?」
「お花摘みに行くからって別れたにょ……」
正直に言うと舘野の口から『お花摘み』という隠語がでたのが驚きだった。
「タダち、なんかとっても失礼なコト考えてないかにょ?」
(な、何故、判った⁉)
俺は、ぶん、ぶん、と首を左右に振って答えた。
「と、トイレに行くのは恥ずかしいコトではないので…は…?」
「べ、べ、別に恥ずかしく……ないにょ…」
俺を睨んで舘野は続けた。
「…ただ、待たせると悪いしぃ……先に着替えてデニ〇ズに行ってて……って、言っちゃったにょ」
それから何故か、ぶるっ、と身体を震わせてから言葉を続けた。
「……んでぇ……おトイレに行く前にぃ、体育の教官からさっきの荷物を言付かったにょ」
舘野は(多分)わざと『お花摘み』でなく『おトイレ』と言い換えてそう言った。
つまり、舘野の話を要約すると、媛乃木も川俣も〝ここ〟には探しに来ない……だろう、というのが結論だった。
しかも、良くない予感がするのだが……
舘野が膝を抱えるようにして、もじ、もじ、している。
「えっと……す、スマホで呼んだら、良いのでは?」
俺の問いに舘野は黙って手を差しだした。
多分だが、持ってるなら貸せ……という意思表示だろう。
体育の授業にスマホを持ち込んで『停学』になった学生の話は時々伝わってくる。
つまり、二人ともここにスマホを持っていないので連絡する手段が無い……という事だ。
こういう時、何て言うんだっけ?
「詰んだ……にょ」
「そう、それっ!」
思わずそう言った俺を舘野が、ぎろり、と睨んだ。
【つづく】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます