anther end

出逢い

第55話

木村連が長谷川美月に出会ったのは大学一年生の五月のことだった。


部活の交響楽団で出会ったのが初めてだった。どうせなら一つでもできることを増やしてみようと思っていた矢先に、入学式で華やかな演奏をしているのを聴いてどうせなら入った部活だった。


部活で指導されていく中、自分の耳元では聴くに堪えない音が鳴っている。対して先輩は軽々と綺麗な音を鳴らして難しそうな楽譜と向き合っている。先輩と自分の圧倒的な差に心が折れかけたときに真っ先に弱音を吐いたのが彼女だった。


美月と名乗ったその彼女はそれまで全員が黙々と練習しつつ心の中で折れそうになっていたのをひっくり返した。それに興味がわいたのが最初だった。


練習が進み誰かが上手くなるとそれに美月は必ず気付いて褒めていた。


それも蓮には好印象だった。


そしてその優しさは蓮にもまた回ってきた。


美月が自分の姿を見て自分に頼ってきてくれたのが嬉しかった。ただでさえバイオリンパートには十人以上一年生がいる。その中から自分のことを見つけて、その姿を見て声をかけてくれたことが更に嬉しかった。それに応えてもっと上手くなりたいと思えるようになった。


そもそも人に頼られるなんて初めてだった。そして、初めて人に頼ってもらえたという事実が蓮に自信を付けさせた。明るく誰に対しても優しく、そしてこんな自分にも頼ってくれる。自分のことを見てその良い部分を見つけてくれる。それにそれは自分でも気付かなかったようないい部分を。


そんな美月に蓮は段々と惹かれていった。

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