僕とカノジョの春夏秋冬
臥龍岡四月朔日
第1話 春の芽吹きと夏の煌めき
彼女は一つ年下の幼馴染だった。
これはBSSですら無い、好きになった時にはもう遅かった、物語。
―――――
玄関のドアを開けると、暖かな春の日差しが僕を照らした。家の前の桜の木には花が見事に咲き誇っている。新年度、僕は2年目の春を迎えた。
「シン兄、おはよう!」
玄関を出たところで話しかけられた。見るとそこには見慣れた笑顔のユキが立っていた。ユキは一つ年下の幼馴染だ。まだ真新しい制服はぶかぶかで、ユキの幼さを強調していた。
「制服、どうかな?」
そう言ってユキはくるりとターンする。制服のスカートがふわりと翻り、ユキのすべすべで真っ白い太ももが一瞬だけ見えた。その光景に僕は思わずドキッとした。
「あ、ああ、そう言えば今日から同じ学校だな。進学おめでとう。……それと、制服似合ってるぞ」
「えへへ、ありがとう」
そう言ってユキは無邪気な笑顔を見せた。
まったく、相変わらずユキは子供っぽいな、あんなターンしてパンツが見えたらどうするつもりだ。まあ僕は今更パンツくらいでどうとも思わないが。なにせ小さい頃には一緒にお風呂にも入った仲だからな。それにユキは妹みたいなもんだ。
「ねえ、シン兄、一緒に学校行こうよ」
「じゃあ、一緒に行くか」
こうやってユキと並んで歩くのは久しぶりだった。昔はいつも二人一緒だったのにな。
「ユキは部活とかどうすんだ?」
「漫画研究部に入ろうかと……」
「ユキ、絵上手いしな」
ユキが昔からイラストが得意だったのを思い出す。昔はよく描いたイラストを僕に見せに来てたっけ……
「そんなことないよ。シン兄は?」
「僕はずっと帰宅部、面倒だしな」
「……私も帰宅部にしようかな」
「いやいや、部活とか、やっといたほうがいいと思うぞ」
うん、特別な事情がない限り部活動はやっておいたほうが良い。ユキも昔みたいに僕の後を引っ付いたまんまなのは良くないだろう。それにユキには才能を伸ばしてほしいと思った。
「うん、じゃあ部活、やることにするよ」
「ああ、それが良いよ」
そんな話をしながら僕らは学校までの道のりを歩いた。
―――――
春が終わり、梅雨の季節。
そして衣替えの季節だ。
通学路を行く女子たちの夏服姿が眩しい。
夏服にはまだ早い気温だが、空気はジメッとしているので薄着のほうが丁度いい感じだ。
「おはよう、シン兄」
家を出たところでユキに話しかけられた。
「夏服、どうかな?」
ユキは真新しい夏服を見せるように両腕を広げる。夏服の薄いブラウスが透け下着が見えていた。薄いグレーのスポブラだった……色気のあるブラはまだ早いか。
「なあ、ユキ。少し暑いかもしれんが下に一枚肌着をつけたほうがいいぞ」
「え!?」
ユキは透けていることに気づき慌てて隠そうとする。
「……ありがとう、シン兄」
礼を言うユキの顔は恥じらいに真っ赤に染まり、僕はその表情にドキッとした。
「良いってことよ。家戻って着替えてこいよ。待ってるから」
「うん、ありがとね」
こういうとこ無頓着なのはまだ子供だな。やっぱり僕がみてないとまだまだ危なっかしい。そんなことを考えながらユキを待ち、一緒に学校へ向かった。
「もうすぐ夏だね。ね、夏休み入ったら一緒に海行こうよ」
……ユキと一緒に海か……ユキはどんな水着だろう?ユキのことだからスクール水着とか?いやいや、いくらユキでもスク水はないだろう。となると可愛い系のワンピースかな。セパレートはユキにはまだ早い!……って僕はユキのお父さんか!
「ね、どうかな?」
少し考え事がすぎた。返答のない僕の顔をユキが覗き込んでいた。
正直なところユキの水着姿には興味はあったが海は苦手であった。海水のベタベタする感じとか砂がジャリジャリと引っ付くところとかが。
「……ああ、まあ気が向いたらな」
その返答にユキは不満そうだった。
結局海には行かなかった。
―――――
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