塔の上の少女

藍無

塔の上の少女

あるところに魔女に塔の中に閉じ込められている美しい少女がいました。その少女は外の世界にあこがれていて、自分のことを閉じ込めている魔女を恨んでいました。

ある日、少女は自分は髪の毛が長いから外に切りに行きたいと魔女に言って塔の外に出ようとしました。

しかし魔女は「髪なら自分が切ってあげるから塔の外には出てはいけない」と言いました。さすがに少女は不思議に思いました。どうして、魔女はそこまで自分を塔の外に出してくれないのだろうか、と。想像力の豊かな少女は、きっと魔女はわるいやつで私とは本当の家族ではないのかもしれない、私を小さいうちに誘拐したわるいやつなにかもしれない、と。少女がそう、想像したのには理由がありました。理由は、その塔には窓が一つもなく、今まで少女に外というものを見せてくれたことが一度もなく、最近は(忙しいだけなのかもしれませんが)少女にあまりかまってくれませんし、つめたいような気がしたのです。それに、前にそんなような内容の話をよんだことがあったから、というのもありました。

そしてある日、少女は魔女に、

「ねえ、今日も外に出してくれないの?」

と聞きました。

「外は危ないから駄目よ。」

と、魔女は答えました。

次の瞬間少女は隠し持っていたナイフで魔女を殺しました。

魔女を殺した少女は、扉を開けて外へ出てみました。するとそこには、

「た、助けてくれ、、、」

と、体の一部が燃えながらも助けを求めてくる人や、火に燃やされて焦げて灰となった人、そしてあたり一面に広がる炎の海があった。少女は茫然としていた。

空を見上げてみると、黒い鳥のような物体がいた。その物体は赤い塊を落としていった。よくみるとそれは赤いのは炎で、見た目としては本で読んだ爆弾というものにそっくりであった。

そして次の瞬間、道の横から走ってきた人が少女を刺し、走り去っていった。

朦朧とする意識の中で少女は思った。魔女の言っていたことは正しかった。

本当に外は危なかった。私は外には憧れしかなかった。なんであんなにあこがれていたのだろう、どうして私は母も同然だった大切な家族である魔女を殺してしまったのだろう、と。

どうして私は魔女を―――いや、母を信じることができなかったのだろうか。

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