となりの山越くん

茨 如恵留

第1話 究極の二択

 隣の席の山越くんは不思議だ。


「筒井さんってさ、砂糖と塩どっちが好き?」

「え……?」


 砂糖と塩。調味料にどっち派とか特にないんだけど。私別にそんなに料理しないし。


「強いて言うなら……砂糖かな?」


 甘いものが好きな私はそう答えた。すると山越くんは頷いて、私に次の質問をした。


「山?海?」

「山」


 何を隠そうハイキングが好きな私。ちなみに虫も余裕です。海は泳げないので無理。


「そっか、じゃあきのことたけのこどっちが好き?」

「たけのこ」

「里派か、筒井さんは」


 あんまりたけのこ派を里派って言わないけどね。でもニヤニヤと笑う山越くんは、そんな私の気持ちなど知らずにどこかに言ってしまった。




「あ、筒井さん」


 以前にぶつかったことのある背の高い男子。なんで私の名前を知っているのかは分からないけど、教室前から私を呼ぶので行ってみることにした。


「サト見てない?」

「サト?」


 里から始まる苗字の人はこのクラスにはいない。なんなら佐藤もいない。サトなんて名前の人を私は知らないのだ。


「うん。筒井さんなら知ってるかなって思って」


 私の知り合いにもそんな人はいない。うーん、分からない。名前以外からのあだ名なら絶対分からないし。


「僕はここだよ」


 彼の後ろに立つ山越くん。小さくて気がつかなかった。


「あ、いた!サト!」

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