いっことよしくん物語 ~カラオケスナック編~

がんぶり

第1話 出逢い

 嘱託社員のよしくんは、半年前に仕事の関係で東京から神戸に異動になりました。

知り合いのいないこの神戸の地で、よしくんは寂しかったのかもしれません。

仕事が終わり、一人で夕飯を済ますとアパートからほど近い新開地のショットバーで呑むことにしていました。

お店に入るとよしくんは、カウンタに立つバーテンダーのマスターに言います。

 「ソルティ・ドッグね。 いつものやつ」

マスターは、にこりとしてソルティ・ドッグを作り、よしくんの前に出します。

 「よしくん、今日は、ダーツしないの?」

マスターの誘いに、よしくんは躊躇しています。

 「いっこが、やるーっ!」

と、女性が元気な声でマスターに言います。

よしくんは、初めて見る女性でしたが、前に見たことあるような、昔から知っていたような気がしました。

マスターが、ダーツ矢を女性に手渡します。

女性は、しばらくの間、電子ダーツで遊ぶと、よしくんの隣のカウンタ席に座りました。

 「私、いっこって言うの。 あなたのお名前は?」

よしくんは、この天真爛漫そうに見える女性に少し警戒心を持ちましたが、よしくんが名前を言うと、女性は、ほほえみました。

 「じゃあ、 よしくんねっ」

そして、二人は、しばらく顔を見合わせました。

 「あーっ! ひょっとして、 よしくん?」

 「えーっ! いっこ?」

二人は、お互いを指差しました。

こうして、二人は、47年ぶりに再会し、これが、神戸での出逢いとなったのでした。

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