その門は突然現れた
eight-ten
序章 『その門は突然現れた』
立っているだけで汗が滲むような真夏のある日。人間界のとある場所に、現代には似つかわしくない真っ黒のローブを羽織った青年が現れた。フードを深く被っていて表情を見ることはできないが、ちらりと見える肌は死人のように青白い。その場所には背の高いビルが建ち並び、中心には大きな交差点がある。彼はその交差点の真ん中で立ち止まると両手を大きく広げた。行き交う人間に彼は見えていないようだ。それともただ無関心なのだろうか。誰一人彼に視線を向ける者はいなかった。
彼が両手を広げ少しすると歩行者用の信号が赤になり、車が彼のすぐ側を通り過ぎて行く。すると地面の奥の方からゴゴゴゴという轟音が鳴りだした。揺れてはいないから地震ではない。ただ道端に転がっている小さな石ころだけは、震えているように見えた。歩行者用の信号が赤から青に変わるまでの間鳴り続けていた轟音だったが、再び人間が交差点を行き交いだすとピタリと止まった。そして気がつくと彼の視線の先には、高層ビルを覆うほどの大きな柱が二本現れていた。
急に現れた二本の柱は人間には見えていない。だがその存在感、威圧感は視線を向けただけで嫌悪感を抱く程だった。黒でも灰色でもない不気味な色、対になっていて、私から見て左の柱には「死」、右の柱には「生」と彫られている。上から下まで幾何学的な模様が彫られているのも目がチラチラして気持ちが悪かった。
私は人間界で暮らしている風の神<
『人間界に
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