奥に触れて
「う……く、ぅ……ふ……ふぅ、は、はぁ……」
前立腺の上をゆるゆる動いている。
奥へは少しずつ、食って増えた分を伸ばし続けている。
このまま奥に進まれて、出てこなくなったら……という恐怖よりも腹の奥に溜まり続け、渦巻く快感の出口の方が気になりだした。
足取りも鉛が括りつけられたように重く重くなる。
息が上がり、行く当てのない快感をどう逃がせばいいのか……この状況でもまだ、俺の股間のモノは勃たないし我慢もできるのが、怖い。
こんなに下半身が重い熱に蝕まれているのに、出すことも脱することもできない。
いろんな魔物に痴態を晒してしまったが、無理やり何度も絶頂させられたのでこんな行き場も逃げ場もないのは初めてで、自分の熱をどうしていいやら……泣きそう。
「あの……本当に大丈夫? その……な、なにかに、なにか、されている……?」
「あ、いや、その……や、宿で話す……」
「う、うん」
やはり俺の様子はエリウスから見てもおかしいのか。
そりゃそうだよなぁ、俺自身でも時間が経つにつれおかしくなっている自覚がある!
というか、尻の中で膨張し続けるスライムが、さらに熱くなっているような……?
それがまた下半身を重くする。
足がガクガク震えてきた。
ああ、まずい。俺の様子がおかしいから、通行人が不審な目を向けている――ような気がする!!
達することもできないからだんだん理性が削れて、とんでもないことを口走りそう。
だって、目の前には、エリウスがいる。
肩を抱いて寄り添ってくれるエリウスに、早く楽にしてって見苦しく縋って叫びたい衝動。
ああ、理性が焼き切れそうだ。
「泥棒ーーー!」
「「――!?」」
悲痛な女性の叫び声に顔を上げる。
体は熱を持て余して暴走しそうだったのに、体は咄嗟に剣の柄を握ってエリウスから離れ、声の方に一歩、踏み出していた。
「っ……う!」
動いたせいで中のスライムが前立腺を押し上げる。
視界の端でこちらに逃げてきた男が腰布の下からナイフを取り出す。
違和感がある。だが、今は!
「強盗の現行犯だ! 止まれ! 止まらないなら斬り捨てる!」
「ク、クソ! 騎士の巡回時間じゃねぇだろ! どけぇ!」
スライムの動きで足の力が抜けそうになる。
それを意地で踏ん張って剣を振り下ろし、強盗のナイフを叩き落とす。
エリウスがナイフをより遠くに蹴り飛ばし、かつ、俺の真横をすり抜けて男の手首を掴み後ろに回り込む。
それを見届けた途端、目の前が真っ白に染まった。
そのまま意識が数秒飛んだ。
次に感じたのは右頬の痛み。
遠くでエリウスの声が聞こえたような――。
「フェリツェ!」
「……っ……う……」
力が、まったく入らない。
口から涎が垂れて、地面と体の間に腕を入れて無理に立ちあがろうとするが目の前がまだ白んでいて涙と、噴き出した汗まで石畳に落ちた。
呼吸が激しく、呼吸もままならない。
なんだ、これは?
達した……? でも、俺の股間は相変わらず無反応。
少なくとも下着は濡れた感じがしない。
え? なに……今の……なんだ? 後ろの、前立腺だけで、絶頂したとでも?
そんなことあるのか? は?
「はっ、はっ、はっ、はぁ……はっ……!」
「フェリツェ、大丈夫なのか!? フェリツェ!?」
「っ……」
気合いで剣を拾って、なんとか上半身を起こして膝立ちする。
マジで体に力が、入らない!
体を動かす度、尻の中のスライムが動く。
いや、角度を変えてもっと深く、拡げてきている。
歯を噛み締めようにもガタガタ震えて声を殺すのにも一苦労。
「フェリツェっ」
「だ……だい、いじょ……ぶ。ご、ごめん……はっ……はあっ……!」
「フェリツェ……だが……っ、く……そこの、角に赤い屋根の宿がある。一人で行ける? この強盗犯を詰所に届けて、すぐに迎えに行くから」
「あ……っ、ああ……! わかっ、た。だ、だいじょう、ぶ。うん……」
そうだ、騒ぎで人が集まってきて、このまま寝ているわけにはいかない。
剣を鞘に納め、なんとか立ち上がった。
強盗はエリウスに任せて、宿で……休まないと。
申し訳ないし、悔しいけど……こんな状態、逆に足を引っ張ってしまう。
「ありがとうございます、騎士様!」
「あ……っ」
「……あら? 騎士様、すごい汗……! もしや体調が悪いのですか? お医者様を……」
「被害者の方ですか? 申し訳ありません、事情をお聞きしたいので、自分とともに騎士団の詰所に来ていただけませんか?」
「わかりました」
被害者の女性が駆け寄ってきて、俺の前に涙を滲ませてお礼を言ってくれた。
いつもなら笑顔で答えるが、今、その余裕がまったくない。
震えながら会釈して、あとのことをエリウスに丸投げした。
目の前が霞む。
本当に、限界が近い。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
幸いというべきか、エリウスに教えられた赤い屋根の建物の前に、宿の看板が立てかけてあった。
おかげで迷わず入店でき、受付に「あとで一人くる。休憩がしたい」とだけ告げられる。
俺の様子はさぞ尋常ではなかったのだろう、受付の女性がひどく慌ててカウンターから出てこようとした。
「お医者様をお呼びいたしますか?」
「いや、大丈夫……です……。でも、できれば、すぐに……休み、たい……静かな、場所で……」
「わ、わかりました。一階の一番奥のお部屋をお使いください。こちらが鍵です。後ほど連れの方が来られるのですね?」
「は、はい。なので……申し訳ないが……」
「はい。ご案内しますか?」
「いや……大丈夫……ありがとう……ございます」
仕方なのないことだが、受付女性のやり取りが煩わしい。
さらに心配した彼女が「お水だけでもお持ちします」と言うのも「連れに預けてください」と断って、壁に手をつきながら急いで受付から左の廊下へ進む。
その一番奥。
手前では声が漏れるかもしれないから、奥でよかった。
けれど、奥までの道のりが本当に果てしなく遠く感じる。
「は、はあ……はあ、はあ……っはぁ……っ」
今にも意識が飛びそうな中、ようやく最奥の部屋に辿り着く。
さすが貴族街の宿、一階の一番安い部屋でも俺の寮部屋より広く、豪勢な家具が取り揃えてある。
赤いフカフカの絨毯にそのまま倒れ込み、扉が閉まる音を聞いて鍵をかける手間も惜しんでズボンを下着ごと脱ぎ捨てた。
おそらく、俺の理性はここで途切れたと思う。
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