つかみどり
ゐ己巳木
第1話
―ここはどこだ…?
さっき、おなかがすいたものなので目の前にあったご飯にかぶりついたら急に上に引っ張られていきなり息が苦しくなって…
そこから記憶がない
周りを見ると、他にも仲間達が数人いた。きっと彼らも同じように知らぬ間にここへ連れてこられたのだろう。しかし、いったいここはどこなのだろうか。
しばらくそこを歩いていると何だか周りが騒がしくなってきた。なんだと思って周りを見渡していると、見つけてしまった。水面に映る大きな影を。
「「やばい。奴らから逃げなければ」」
頭上の何者かは、逃げ惑う俺たちに容赦なく攻撃してくる。すると仲間の一人が奴らの手につかまってしまった。捕まえた奴は不気味な笑みを浮かべて
「ヤッタアア オカアサン オトオサン ツカマエラレタアア」
と叫んでいる。するとそいつは嬉しそうにどこかへ行ってしまった。奴らが一人減ったとしても数はほとんど変わらないほど奴らの数は増えていた。
相変わらず仲間はどんどんと捕まえられていく。精一杯悲鳴を上げているが、奴らには聞こえていないのだろうか。そんなことを考えていても俺の体力は削られてゆくばかり。
しかし奴らは疲れているようなそぶりも、仲間たちが捕まえられ、悲哀に満ちた様な悲鳴を上げていても気にも留めない。まるで、この状況を楽しんでいるかのような…
するとその時、俺の真上に手が伸びてきた。ひらりと交わしたが、そのすきに横から手が伸びてくる。
「うっっっ……… グアアアアア」捕まえられても必死に抵抗していたが
―――――息が… もう… だめだ…
パチパチと火花が散る音。 魚がこんがりと焼けるいい匂い。
「は~い、どうぞ」
「うわあ、おいしそ~!」
少年は、手渡された出来立ての鮎の塩焼きの腹にがぶりとかぶりついた。そして、彼の様子を見ていた母親が、にっこりと笑って
「またやりたいね。魚のつかみ取り‼」
つかみどり ゐ己巳木 @kotobukisushi
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