モノガタリノタネ

春渡夏歩(はるとなほ)

ようこそ! 「モノガタリノタネ植物園」へ

 —— ここは不思議な植物園。

 

 では、さっそくご案内致しましょう。


 まずは、「一般展示室」をご覧ください。

 ここに展示されているのは、「モノガタリノタネ」から芽が出て、成長していく植物たちです。

 どんな花が咲くのか、成長の様子を毎日楽しみにして、のぞいて下さるお客様もおられます。

 後ほどゆっくりまたご覧になれますので、先に進みましょう。


 こちらは「特別展示室」です。

 「モノガタリノタネ」から成長し、完成形となった植物たち。咲いている花は枯れることがありません。私共が丹精込めて育てた植物たち、それぞれに想いが詰まっております。


 

 では、次に奥にある研究棟へと向かいましょう。本日は特別に、各研究室へもご案内致します。


 ●モノガタリノタネ収集班

 こちらの研究員達は、収集に出かけていることが多いので、あまり在室しておりません。「モノガタリノタネ」は、見つけようとして、見つかるものではないのです。


 ある日突然、そらから降ってきたり、風に乗ってフワフワと飛んできたりもします。地面を掘って探すこともありますし、水に乗って、流れ着くこともありました。気がつくと目の前に落ちていることもあります。

「モノガタリノタネ」センサーの感度をより良いものにするというのも、研究テーマです。


 ●モノガタリノタネ発芽研究班

 「モノガタリノタネ」には様々な種類があります。大きいものや小さなもの、小さなタネがたくさん集まってひとつになっているもの、硬いもの、ゴツゴツしているもの、丸くてスベスベなもの、鮮やかな色をしているもの……などです。


 こちらでは、タネが発芽するために必要な条件を研究しております。

  必要な日光の量。

  温めた方が良いのか、冷やした方が良いのか。

  必要な水分の量はどのくらいなのか。(水のやり過ぎが良くないことはわかっています)

  養分として、音楽や映像を流したり、物語を読み聞かせることも必要です。

  時々、刺激を与えてみます。(軽く叩いたり、ひっくり返してみたりします)


 長い間の研究においても、いつ、どのタネから芽が出るのかは、依然として謎に包まれております。



 ●モノガタリノタネ生育研究班

 芽が出たタネを育てているのは、こちらです。

 様々な植物たちがあります。


 一気に育って、大きな花を咲かせるもの、可愛いらしい小さな花が沢山咲くもの。

 じっくりゆっくりと長い時間をかけて、成長するものもあります。

 枝分かれして、実をつけ、そこから新しいタネが採れることもあります。

 中には複雑にツルがからみあってしまう品種もあり、手間がかかるコほど、大きく成長してくれた時には嬉しいです。


 植物を育てる際には、お世話のしすぎとならないよう、自然な成長を信じて、見守るくらいの方が良いようです。


 研究データを元に大切に育てられた植物は、成長が安定したら、先程の「一般展示室」へ移動して、公開します。公開中も時々、伸びすぎたり繁りすぎた余分な枝葉を整えていきます。


 どんな花が咲くのでしょうか。とても楽しみですね。


 さて、そろそろ展示室の方へ戻りましょう。


 この植物園にはいろいろなお客様が訪れて下さいます。

 じっくりと丁寧に説明を読んで、ひとつひとつの植物を鑑賞している方。

 お気に入りの植物の写真を撮って、紹介して下さる方もいらっしゃいます。とても嬉しいです。


「お客様の声」コーナーの感想で、思いがけず、お褒めのお言葉を頂戴することがあると、職員は皆、飛び上がるようにして喜びます!


「この植物園が好きです」

 そう言って、応援して下さるお客様に、私共一同は支えられております。


 それでは、本日のガイドツアーは、これにて終了とさせて頂きます。

 またのご来園を心よりお待ち申し上げております。


 ありがとうございました。



*** おしまい ***

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モノガタリノタネ 春渡夏歩(はるとなほ) @harutonaho

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