第50話

コードロックとウィドウの二人といえば富士見ふじみ屁院へいんという一人の中年男性を失ってしまったことへは哀悼の意を表することにする。それはそれとしても色々と状況が分からない。

「何がなんでこんな世紀末世界にまでなってしまったのか。理解など難しくて堪らないのだが」

「知ったことか。こっちだって色々と忙しいというか………………これを誰が理解など出来るか」

 航空機に何とか乗せて貰えた二人としては、どうにかこの状況からの脱出というのをしたいところだ。そんなことが叶うのであればだが。実際は、それが叶うわけはないと、この機にいる誰もが思ってしまっている事。

「これの再建なんて気楽にやれたらどれだけ嬉しいですかねぇ。冗談でも見つかってしまえば、それこそ己の精神が正気でいられる自信なんてありませんけれど」

 ウィドウとしてはこれが本音。自分が暴走する危険があって、それの対処を誰かにも押し付けてしまおうという魂胆。こうやって前もって何度も警告を出しているだけまだ優しいことなんだろう。

「精々が地下シェルターでも使ってのサバイバル程度か。予定はしていたがどこかが完成をしたという報告など聞いていないのだが」

 街のあちこちで怪人がウロウロと徘徊していて人命を無為にでも破砕している。そしてその怪人共の中にはその人間を含めた何かしらを捕食する様子というのが窺えてしまう。この中でどうやって生き延びようとするのか。

「もしや屁院から聞こえてきていたあの女の子達が僅かな鍵にでもなっているかとか考えたが」

「それは望み薄だろう。どうせ期待したところでそこまでの役には立たない。代わりなどいくらでも利く。いうことを聴いてくれない世界など丸ごと交換してしまえばいいとは思うがそれは我が儘が過ぎるか」

 コードロックだって自分の在り方というのに頭を悩ませている。現状が気に入らなければ廃棄してしまえばいい。だがそれは人生を捨てるのと同義だという認識でいるわけだ。

『所詮はどこを主観に置いているかという話だろうが。爆撃でこの怪人共を排除したからといって解決することなど決して多くはない。寧ろここからが本番だ。この損壊だらけの街を再建していくのか』

 全く以てその通りだ。実際のところはこれだけの勢力を使えるというだけ。そうしなければ、勝ち目などないからこそ発動させたわけなんだが。

「だがそれも望んだわけでもない。勝てるわけもない。そう思っている。なんて我が儘な野郎だ」

『いや、偉い凄い部隊の隊長がそんなんだったら付き合うのも大変苦労するのですがマトモな反応をクダサイよ』

 この機のパイロットから文句が飛んでくるとは思いもしなかった。いいや、これは結構な日常だ。

「これで海外まで逃げるのか。亡命とするにはこの機だけでもやれることは可能であるなんだが」

「それは不可能だってことだ。どうせここからだったら一発のバズーカでも飛んできてしまうわけだ」

 そして本当に暴力として砲が飛んできてしまう。この航空機というのは撃墜されてしまうわけだ。

 地面にぶつけられてしまってゴロゴロとアスファルトを転がってしまうことになるのだが。そしてあっという間に囲まれてしまうわけだ。

「ここまでの威力まで抱えていれば、どんな砲手なんて物騒なことで」

 この場所を合わせてこちらにまで寄ってくるとは。恐ろしい限り。

「とはいかないのがこちらの強さの証明になるだわけだ。誰にも勝てるはずのない事象の怪物。それがコードロックというのだよ………………なぁ」

 コードロックだってこの実力というのを思い出せば、踏み潰してでも蹴り飛ばしていくことをされていくだけの景色がそのままに一瞬にして広がっている。

「トンデモないとんでもない過大評価ですよとかいうと他の者に喧嘩を売っていると思われてしまうのは避けるべきなんでしょうがねぇ」

 実際にここまでの強さを見せられて感動などしないわけにもいかない。と言いたいが相手が弱すぎただけか。

 周囲に広がる死体の数。

「これこそが、この私が桐長やら昼颺をしてその誰も呼ぶその証明だ」

「嘘をつけ。実際にそこまでのことを当人から聞いたわけでもないでしょうに」


 視界に映るは無限の事象。いじらしいほどに限界を求めてしまっている。

「だとしてもなんで彼とはぐれてしまうんですかねぇ。別にただのパイロットが生き残るなんていうのは………………気に食わないと思うがね」

 自分の命を素材にしてでも演出を高めようとするのは………………普段は他の面子にでも止められてしまうのだが。現在はその誰もいやしない。

「へへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへぇ‼死者への手向けなんていうのはどんなのをくれるのかなぁ‼」

 コードロックを目的地にまで運んでいくなんて立派な仕事をパイロットとして達成させたヒードルムとしては満足に散っていける。この………………怪人ばかり広がる非道な景色にへとだ。

 視界に映る下らない無様な姿というのは鏡にある己のそれ。満足にでも散れるというのであれば………………そもそも散ってから目的を走らせることをするのだがなさぁ‼


 

 現在地を探していれば、届きそうにない類煮れにの見える事象というのは恐ろしく不気味なこと。どれだけのことをして己の躰が傷つけられて尚も立てるというのか。それはこの目の前にいるオーバルによって救われたということなのだろうが、それでも考えることは多い。

「なんでこんな………………」

「なんでこんなことをして助けてくれたのかってことか。だとすれば聴いて答えが出るはずもないだろうが。幻覚でもない。こうやって生かしていれば進んでくれるということなんだよ。この儀式の場面にでもだ」

 奥にでも放り投げていけば、そこが儀式としておくべき地点である。ここにある必要があるからこその場面だ。これで一切身動きをさせてもらえないらしい。それと同時に思うことがある。

 どうせ現在ではこの場にある自分などは意識を離れた下らない肉塊に過ぎないだけだということ。絶望の時を生きてしまえばそのままに自我が生まれてしまうのだろう。不甲斐ない肉塊。

「ここから私は望めるはずもないやれるはずもない。あぁそうだ、ここからは時分の死など」

「ちょっとうるさいよ」

 オーバルはすぐさまこの類煮れにの下半身からブクブクと増殖を始めている肉塊というのを黙らせる。

「今の状態にまで殖えるとは予想外だった。これは一旦は突き詰めていった結果に割りきりはしたがそれでもあらゆることが足りていない。儀式に事足りるとは到底思えないのだが」

 後ろからやってきたのはオーバルの友人であっただろうかねぇ。


 己から半身を持ってかれてしかった類煮れににどれだけの時間がくれただろうか。そうだとしても色々と足りないことが多すぎる。

「例えば血液とか」

 この現在を常態を思えば命を揃えて無事を確保することなど気楽にでも進めるはずもない。限界値を求めていけば復活も可能なのであろうが、そんなことなど大体一般人な自分らに出来るはずもない。

「それだとしても玲愛レアが生きていただけ何度も思うように幸運だと感じますよ」

 こうして半身が削り取られてしまっている以上は生き残ることが出来ているのも既に軌跡みたいなことだ。

 今のところは昼颺ひるあとの合流を目指した方がいいのだろうが、それすら難しい。いいや、そこのところはようやくめどがついたので問題になどしてしまう理由はない。

「………………いや、それでなんでここまで無事にでもたどり着けるんですか。ここはかなりの秘密基地であったはずなんですが」

 そしてここがどこかといえば、荷稲かいなの部屋、その待機室みたいなところだ。

「なんで真っ直ぐにでもここに来れたのかなんて聞いてやる理由もないか。君たちにでも何か聞いたら頭がおかしくなりそうだ。擬音がいっぱいで理解など難解が過ぎる」

 荷稲かいなは散々に呆れてしまっている様子。そんなに酷いつもりはないのだが、それでも確かにここに来るまでは結構大変な言葉に表すのは難しいことをしてきたのは事実だ。

「別にいいけれど。用が済んだら出ていってもらえると助かるよ」

「薄情な。それが死にかけの旧友にかける言葉ですか」

「こっちだって忙しくしているのと同時に電力とか食料とかが全然数が揃っていないせいで三人でもすぐに飢えて死に絶えるのが目に見えてくるって」

「あぁそれなら」

 そこで懐にでも抱えて………………ではなくてカートで段ボールにでも入れていた荷物。それを中にまで持ち込んでくれば荷稲かいなにへと見せてくることをしてきた。

「なんであるんだよ。そしてそれをこのうるさい部屋にでも持ち込まないで欲しいのだけれど」

 この狭ッ苦しいコンピューターばかり揃えている空間。それでも、そもそもが現状ではネットワーク等も碌に動いていない。それを思い出してみれば、連絡がついたこともあってどうにか多少は復旧してきているらしい。それが中々に異常なことだと荷稲かいなは思う。

 ネットワークやら電力やらが自然にでも復旧するのは幸運だろう。それが自然にであればだが。誰か有志で己のためにでも繋げたというのであればそれのご相伴に預かっている自分となるのだろうが。

(問題は………………街で暴れているような怪人が己の自由意志によってそれを実行までしてきたことだ。これを異常に感じるのはおかしなことでもはずなんだが)

「でも昼颺ひるあとは連絡はついていても現在地が分からなくなってしまっている以上はここから追いかけていく術もないだが」

「えっ?それって聞いてないんだけれど」

 玲愛レアに顔を詰められてしまっていく荷稲かいなである。

「あぁまぁ一応一回だけは。それで特に分からずにぷっつりと切断されてしまったのは気に入らない。その不幸というのを思い出せば」

「私も一度繋がったけれど既に誰かにでも拾われてしまっていた様子なのが不安なんだけど」

「ちょっとまって、それ聞いてない」

「だって今初めていったことだもん」

 類煮れにからの、その言葉というのを聴いてしまえば頭を抱えたくもなる荷稲かいなである。現状からして謎が多すぎるというのに天変地異が行われているのを黙って観ているしかないなんて。というか傍観者にすらなるのが難しいのが。

「私たちにとっては認められないわよねぇ。ここまで社会が混乱している状態で自分たちがこの世界を支配いているなんて傲慢な考えなどするつもりはなくても」

 こんなふざけた妄言を口にしだしていた類煮れに荷稲かいなの判断により、ベッドにでもぶち込まれてしまうことになった。精々人ひとりが入れる水槽にへとど。

「ハハハハハ何よこれは」

 たとえ上半身だけになっても、どうにか躰が修復を始めている時点で類煮れにの異常性は目に付くが、それでもこれはおかしいと思う。

「どうして貴女がこんな………………」

「別におかしなことでもないでしょう。確か英砺えいれだってもこのことに関しては耳には………………多分噂程度にしか聴いてはいないかもだけれど。それがどうしたということだよ。いくらフリーで活躍している自分というのを思えばどれだけ重宝されているのか。それを思い出せば私の存在など………………凄く誰からも強く感じられていることだろうさ」

「………………は?」

 あぁ、ダメだ。こいつは私の視界に映しておける存在ではない。一刻も早く排除してしまわないと危険がやってくる。とっとと壊してしまわなければッ⁉

「遅いよ。隙でも見せたらそれで全身を露悪的にでも醜悪な境遇に置かれてしまうことがあっておかしくないと覚えておくべきだよ」

 それで虚空から取り出してきた剣とそれが収まった鞘によって叩きこんでいった一撃である。そして玲愛レアの意識を墜としてしまえば………………それでこの後にどうするかを困ってしまう荷稲かいなだ。

「学者さんの一人でも手に入れてしまったが、それで悪くはないらしい。これでも己の魂をチップにでも賭けてしまうほどには博打を打つ類ではあるが」

 その直後に吐血をしてしまうほどには体調不良である。精神が可笑しくなっているのは自覚しているが。それがなんだっていうのか。死んだら終わりだっていうのに。


 いくら何でも怪獣から逃げていくなんて無茶苦茶だ。そして真っ先にあちらこちらにまで動きまわっているであろう桐長からしてもう姿が見えないのが怖く感じられてしまうのだが。

 叡王香里とそれと一緒にいる桜木さくらぎ塵裏ちりりとしては盤面に対してどうこうするのが難しい。それでも頭を悩ませてでも高い電波塔にまで登ってきた価値というのはあるように思う。

「だとしても難しすぎるだろこれは」

 お互いがお互いにでも囮を務めていくという無茶を通す役割。それをしっかりとこなしてみればあっけなくも沈んでくれたこの怪獣。それの処理を任せてくれたのは素直に喜んでいいのか怪しいところではある。

「何せ現状でさえもピクピクと動き出しているのが気色悪い。これをどうやって処理しろなんて………………あぁ?」

 そこで疑問符を上げてこの道端にでも倒れてしまっている巨体の内部をほじくり返していこうとする桜木さくらぎ塵裏ちりりである。だがその瞬間にて違和を察して咄嗟に距離を取ることをしたのは英断だったと思う。それで肉塊というのが渦巻いて奇怪な姿をとりだしてくれば………………だ。

「どこまでもヒトをおちょくってくれば気が済むんだよこの世界は」

 肉塊としてあったタンパク質や炭素やら珪素で構成されていた不完全で不可解な怪物が見せてきたのは桐長が今まで従えてきた者達。その中でも我々の中では死に絶えたと認識していたはずのそれ。そんなのがこうして悪趣味にも見せられてしまえば気に入らないと激昂したくなるのも当然か。

 そしてすぐさま腐り果てて蒸発してしまったのだから手に負えない。そこで再びではあるが荷稲かいなにでも連絡を取ってみる。

『はいどちら様ですか』

「………………別に誰だっていいだろ。いちいち相手の名前でも訊くような奴でもなかったはずだが」

『あれそうでしたっけ。なんでもいいじゃないですか。それでどんな』

「ざけんな」

 それですぐさま通信を切断してしまうあたり叡王香里もかなりの苛立ちというのはあるらしい。いいや、これは苛立ちというよりは激昂になってしまうのか。

「どうした?」

荷稲かいながやられている」

「へぇ。あれを倒すだけのことが出来る奴なんて………………こんな世界では何が出てきたって驚いてしまうだけで済むか。不可思議な事象などは」

「どうせ全部我々が呑み込んでいく。組織というのは国家として地に脚がついてないからこそ怖い。それこそ我々であるからこそ、最期に笑って満足にでもキエテいけたらどれだけ嬉しいことだろうかさぁ」

 この場にやってきたのはどこかで用事を済ませてきたらしい桐長である。

「どうしたんだよ。そんな仏頂面をして」

「いいや、振色を失ってしまったことがとてもとても惜しいと感じてしまっているだけさ。どうせ後で取り返すなんて言えないからこそ人命は尊いというのに。そしていくらでも替えと蘇生が効くのなら命の値段などストップ安だ。そして我らは手段としてそれを用いようとしているから罪深いのだけれど」

 桐長の眼には一体どんな景色が映っていることだろうか。恐らくはこの世界の終焉というのだろう。既に儀式は完全なものが揃っているらしい。暗雲渦巻く空に向けて大きく逆五芒星が描かれている。そこに置かれている物品の一つに注意をして目を凝らしてしまえば、それで少々ではあるが不快な様子で顔を歪めてしまう。

「チッッ!今のところはこちらがわざわざ手を出すまでのないとか嫌がらせにもほどがあるだろ」

 こんな物でも見てしまえばそうもなる。なんで、振色の部位の一本でもここで見なければいけないのか。明らかに生贄の要員だこれは。

「今のところというのであればつまりはいずれば動くということか」

「準備だけはしておいてくれ。比較的早くに動くよ」

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