第176話

眠い。


瞼が重い。


身体も重い。


まだまだ全然眠れそうなのに、自然と瞼が光を入れようとしてくる。


どうせ私はまだ小さいままなんでしょ?


だったらもうちょっと寝かせてよ。


大学も行く必要ないんだし、皆も学校で夕方からしか来ないんだから。



ヨダレが出ているような気がして、口元に手を持って来ようとする。


でも上手く手が動かせない。


やっぱりこれはまだ夢なのかもしれない。


だって自分の足を動かそうとするも足すら動かせない。


身体を仰向けから寝返りさせようとすると、カシャッと鎖を引くような音がして、


私はまだブランコに乗っているのかなって思った。



そうだ、凌久は?


私をブランコに乗せてくれた凌久はどうなったの??





「おはよう、伊東さん。」



私の狭い視界にぬっとその顔が割って入った。


凌久じゃない。



「ハン・シアン・・・」



自然と声が漏れた私の唇は、何故か乾いていない。



「小さい伊東さんも、本当に本当に、美しいね。寝ている間、何度もキスをしたんだよ。」



のらりくらりとした口調に身震いするような言葉がまるで合っていない。


でもようやく鎖の音が鮮明になって来ると、

自分の手足が自由を奪われていることに気付いた。


斜め上の方に目をやると、少しゆるんでいる鎖と自分の小さな手首に繋がれる手枷てかせが見える。



「ッな、なんで??!

なんで縄じゃないんでしゅか?!!」



・・・しまった。


途端に突っ込みどころを間違えた。


1年前の事件の時、強い私でさえ縛られていたのは縄だったのに。


なんでこんな力の無い私をわざわざ鎖なんかで繋ぐの?!



「伊東さんに縄だなんて、あまりにも失礼でしょ??伊東さんには、鎖がとっても似合ってる。」



しかもわざわざこんな手枷と足枷まで用意して・・・。


ネットで買ったのだろうか。


ベッドに括りつけられた鎖が四方から私の四肢を捕らえている。

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