第175話
里桜の目の下には傷痕がある。
私の血を飲んでも治らない傷痕が。
青塚高校と白丘高校の喧嘩の後、皆が居なくなった後の地下の駐車場。
あの時かすった映像が、砂嵐の中流れ出す。
そうだ、これは里桜と宗平と初めて会った時の場面だ。
私との強さの差に引き際を分かっている宗平とは違って
何度も何度も私に向かって来る里桜。
軽く殴って吹っ飛ばしてもすぐに起き上がって、何度も何度も私に攻撃を仕掛けて来る馬鹿なヴァンパイア。
最初はそう思っていた。
コンクリートに背中を叩きつけられても、私にガン垂れながら歯を食い縛り、叫び声一つ上げない。
それは青塚高校のトップに立つ里桜のプライドもあったのだろう。
ちょっとカッコいいと思ってしまった。
私の脳裏にはずっとその時の里桜が焼き付いていて、
だから1年前の事件の時、総長である私も耐えなきゃって思ったんだ。
それから手加減を忘れた私は里桜をボコボコにしてしまって、
立ち上がることすら出来なくなった里桜に仕方無く自分の血を飲ませた。
初対面だし今の今まで敵だったから、首から吸われるのには抵抗があって
私が腕を差し出すと無我夢中で吸い付いてきた。
さっきあれだけ私に牙を剥いておきながら、今じゃ私の血欲しさに牙を立てている。
今度はちょっと可愛いなって思ってしまった。
「狂喜の血」はヴァンパイアのどんな傷でも治すはずなのに、何故か目の下の傷だけは治らない。
『・・・お前の怨念でもこもってんじゃねぇの。
どうすんだよこのキズ!
一生もんかもしんねぇじゃねえか!』
そう私に向かって叫んだ里桜。
全く笑えない里桜の悪態が地下の暗い駐車場に木霊する。
・・・あれ??
その傷、私がつけた傷だっけ??
そっか、私がボコボコにした時の傷なんだ。
じゃあ、仕方無いね。
それは私のせいだから、
ちゃんと責任取らないとね。
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