第170話

スマホからは途切れることのないコール音が聞こえて、その音がどんどん遠ざかるような錯覚に襲われた。


凌久の息を呑む音が聞こえると、私もそれが移ったかのように息を呑み込む。



「もしかしてハン君は・・・ヴァンパイアじゃないんでしゅか・・・?!」


「・・・なんで、ボクがヴァンパイアだと思ったの??」



───何で私、ハン君がヴァンパイアだと思い込んでいたんだろう。


てっきり大学で、私の匂いに釣られて話し掛けて来たんだと思ってた・・・


ハン君は一言も自分がヴァンパイアだなんて言ってないのに───



「言ったよね?ボクは"狂喜の血"の匂いじゃなくって、伊東さんの匂いが好きだって。」


「じゃあなんで私に近付いて来たの?!」



私の血を狙っているわけじゃないなら、一体何のために



「何回でも言うよ。ずっとずっと前から、君のことが好きだったんだよ。」


「私のこと、元々知ってたんでしゅか・・・?!」


「・・・うん。ボクが10歳の頃から、ずっとずっと君を想ってきたんだよ。

君がボクと同じ、"狂喜の血"を持つ人間だから。」



・・・「狂喜の血」を持つ者は狙われる存在のため強さが与えられる。


今の私には何の力も無くって、


スマホからは留守番電話の音声が流れ始めた。

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