第106話

でも、里桜は笑っていない。



「お前・・・今日どこ行ってたんだよ?」


「・・・え」



里桜の手にはカブトムシの幼虫のぬいぐるみがあって、私の服を指差して言った。



「その服・・・・なんだよ・・・?」


「・・・・ええっと・・・」



敵の本拠地にお呼ばれしていました~、


敵さんに服とぬいぐるみを買って貰った上にお昼をご馳走になっちゃいました~、


・・・なんて言ったらどう思うだろうか??


まあほぼ拐われたんだけど。


宣戦布告をされたとしても、わざわざ敵の家にまで行く意味が分からない。



なんでか私は凌久を庇う気持ちと


なんでか里桜には知られたくない気持ちが働いて、思わず嘘をついてしまった。



「・・・・これは、瞳子しゃんが持って来てくれて・・」


「・・・・・・・」


「・・・・」



里桜が無言で私の傍まで来るとしゃがみ込んだ。


私に幼虫のぬいぐるみを持たせてくれて、


膝を立てて座り込み、少し間を置く。



私は直ぐ隣にいる里桜の体温に酔いそうになり、このままぎゅっと里桜にくっつきたくなった。


里桜に抱っこされたい・・・・。



でも伸ばし掛けた手を、


里桜が素早く掴んだ。



「・・・・それは、俺たちじゃお前を守れねぇから・・・?」


「え・・・・」


「アイツになら守って貰えそうだから庇ってんの・・・?」


「・・・あ、あいちゅって・・・?」


「・・・・・・」



何故か全てを把握しているように私に問い掛ける里桜。


それなのにまだシラを切る私・・・。


おかしいな。


私は今小さな子供のはず、


普通に事実を話せばいいのに、なんでこんな嘘をつくのか・・・。

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