第95話

凌久と一緒に家に上がると、あくびが止まらなくなった。


急に眠気がやって来たらしい。


居間に座り込むと、抱き締めていた幼虫のぬいぐるみがコロッと腕から落ちる。


私は弾力のある幼虫の上に伏せるように顔をうずめた。



虚ろな目をする私を、凌久が上から抱き上げお姫様抱っこをしてくれた。


隣の部屋に行くと私を布団に寝かせ、凌久も隣で当たり前のように寝転ぶ。



横向きに見つめ合うと、重たい瞼の隙間から凌久の綺麗な顔がチラチラと見えた。


凌久が肘を曲げた腕に自分の頭を乗せ、私の頭を優しい手つきで撫でる。



さっき凌久の家で何か言いたげだった彼の唇が乾き、上下がくっつきながら開き始めた。



そんな姿が妙に色っぽい・・・


なんて思ったのも束の間、


彼の言葉が私の思考を停止させた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る