第92話
車に乗り込むと私は後部座席の、凌久とハン君の間に座らされた。
「チャイルドシートっていくらくらい?」
「・・・凌久、「飼う」って言ったの本気だったの?」
洸太郎がギョッとしたように声を上げる。
凌久の私を「飼う」発言が本気度60%になったところでハン君が私の手を掴んだ。
「・・・・・伊東さん、大学はどうするの?しばらく、来ないの?」
「うん、休学届けを出しゅつもり・・・。」
「そっか、じゃあ、マメに連絡するから、
伊東さんも、マメに返してね?」
ハン君がポケットから私のスマホを取り出すと、ようやく手に返してくれた。
スマホの画面を見ると特に誰からも連絡は来ていない・・・。
ラインの画面を見ようとしたところで凌久が横から話し掛けてきた。
「この後お前はずっと一人なのか?」
「・・・・ううん、夜は皆が来るはじゅ。」
「・・・・ふーん。」
しばらく車が走ると、大学から近い場所にある牛丼屋に到着した。
そういえばハン君、この牛丼屋に置いてある漬物が美味しいって言ってたっけ。
「バイト何時までだよ?」
「朝の、5時まで。」
「頑張れよ。」
凌久の言葉に特に何も返さずハン君が車を降りた。
「じゃあね、伊東さん。また行くから。」
「・・・・うん?」
ハン君が私に微笑みながらバタンと車のドアを閉める。
「行くから」って、どこに?私のうちに??
再び車が走り出すと凌久が前のミラーを見て話し出した。
「洸太郎、夜までこいつんち居るわ。帰りは勝手に帰る。」
「・・・・は??」
「さすがにこんなちっさいの一人にしとけねえだろ。」
「・・・はいはい。」
「え??!凌久がうちに来るの?!」
「嫌か?」
「・・・・・ううん、ヤじゃない。」
嘘。
敵の総長がうちに来るってどうなんだろう。
でも凌久が来るのは本当に嫌じゃない。
むしろ嬉しいくらい。
あんな狭くて古いアパートに来て貰うのがちょっと恥ずかしくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます