第82話

目の前に座る蘭が斗和に差し出されたお茶を一口飲むと私を見た。



「私、三潴みずまにナンパされたことあってさ」



「・・・・。」



蘭は美人でセクシーなお姉さん系だが普通の男子高校生からしたらかなり敷居が高いと思う。


三潴にとってはしたる問題ではないのだなと改めて思った。


そのグイグイ声を掛ける勇気と精神力を見習いたい。



「こっちは断ってんのにしつこくついて来てさ・・・

そこまでしつこくナンパしてくる奴初めてだったから仕方無くご飯だけ一緒に食べてやったのよ。」



「・・・・・」



「でもアイツ案外いい奴だし、話も面白いからその後ホテル入ったわけ。」



散々断っておきながらこの女、結局のとこホテルってそのゆるさはどうなんだろう。



・・・・というか斗和は彼氏じゃないのだろうか?


そんな無粋な話をベラベラとする蘭だが、斗和は相変わらず蘭が次に食べる生春巻を用意している。



「でね、アイツ私の脱いだ姿見て逃げ出したの。」



「・・・・え」



脱いだ姿??



私は彼女の胸元を見た。


しっかりと胸は出ているが、つまりそれは上げ底だったとかそういうことですか?


いや、上げ底だとしても三潴が脱いだ女の子を前に逃げ出すはずがない。


例えば胸がえぐれていたとして、叫びはしても逃げはしないはずだ。



「しっつれいな男じゃない?!」


「・・・・はあ。」




「蘭、説明が不十分すぎる。」



洸太郎が横から割って入った。



でも何故だろう、そこからちょっと微妙な間があった。


割って入って来た割りにすぐには不十分な説明を充分にはしてくれない。



その間に、蘭はまた斗和に"あーん"と生春巻を食べさせて貰っていた。

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