第79話

「そうだ伊東さん、」



ハン君が思いついたようにゆっくりと立ち上がり冷蔵庫へと歩き出す。



「こないだね、赤カブを漬けてみたんだ。

良かったら食べる??」



冷蔵庫から丸いタッパーに入った赤カブの漬物を出して来てくれた。



「・・・そんなん食べさせたら将来高血圧になるだろ。」



凌久が顔をしかめ片足に肘をつき頬ずえをつく。



・・・凌久と洸太郎以外の皆がゆるりとお昼ご飯の準備をし始める。



私の前にはストローが付いたお茶にスプーンとフォークが用意された。



「箸使えましゅ!!」


「洸太郎は車だよね?お茶でいい?私らワインもらうわ。」


「ああ、ハンは夕方からバイトなんでしょ?送ろうか?」


「うん。ありがとう、洸太郎。」



あれ、誰も私の話聞いてくれないんだけど。



蘭が三等分に切り分けた生春巻を私の前に置いてくれた。


凌久が切り分けられた一つを手で取り、マヨに付けて私に差し出す。



「・・・・ほら、食え。」



ごつごつした固そうな指に挟まれた生春巻の中には千切りにされた野菜と鶏肉っぽいものが入っている。


お腹と背中がくっつきそうだった私は迷わずパクリと凌久の指ごと食べた。



凌久の「飼う」と言った言葉はあながち間違いではないかもしれない。


これじゃどう見ても餌付けだ。



うん、全然悪くない。



食感も味もなかなか良い。敵のビッチはなかなか腕前がいいらしい。



凌久の指にはマヨが残っている。


私が食べたのだから私が綺麗にしないと、とよく分からない気遣いが働き、私は凌久の指を舐め取った。

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