第77話

その時、玄関のドアが開く音と風が入る音が大きく聞こえた。


ギシギシと誰かが廊下を歩いてくる。



「お昼だよ~ん♪凌久ちゃん起きてる~??」



女の声だ。



アッシュグリーンのミディアムヘアに身体の線を強調するようなノースリーブのタートルネックワンピース。


口元にはホクロのある、なんとも色気を漂わせる女がお皿に大量の生春巻を乗せて入って来た。



「え?!!ちょっと凌久!!

あんたいつの間に子供作ったの??!!」



女が私を見るなり急に驚いた口調で叫んだ。



「・・・泣かすぞビッチ。」



凌久が女に悪態をつく。


なんというか急に場が明るくなった気がする。


でも女の後ろからまた違う声が聞こえて来た。



「・・・・孫、かもね・・・。」



彼女の後ろからひょっこりと眼鏡の男が顔を出した。


髪の毛が派手に赤みがかっているにも関わらず、なんとも幸薄さちうすそうな顔をしている。



「伊東さん、・・・彼女がらんで、眼鏡を掛けているのが斗和とわだよ。」



ハン君に紹介して貰い、凌久の腕から2人の方を交互に見た。


蘭は明るそうなキャラで斗和は陰気臭そうなキャラ、何とも対照的に見える。



「伊東さんって・・・ウケるし。

伊東織果の妹か何かなのそれ?」



蘭がテーブルにお皿を置くと、生春巻を一つ取ってパクリと口に咥えた。



「伊東さんに妹はいないよ。これが伊東さんなんだよ。」



何度も私を私だと説明するハン君はいい加減面倒になってきてるのではないだろうか。


でも喧嘩を売られた以上、ここは"badなんたら"の総長である私がビシッと言ってやらねばならない。



凌久のたくましい腕に抱かれながら、私は思い切り鼻から息を吸い込み深呼吸をした。

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