第44話

ぼやける視界を必死に見据えてしっかりと立ち上がると


後ろから大きな手で頭をぽんぽんと撫でられた。



「・・・・悪かったよ・・・


お前の友達のこと悪く言ってさ。」



里桜の声が頭上から聞こえる。


さっきとは違う優しい声色に、涙が抑えられなかった。



子供って凄い。


たった1日でこんなに涙が出るんだ。





「うわあ"ーーー・・・・」



「だ、だから・・・・わ、悪かったってば!」



里桜がたじろぎながらも声を上げて泣く私の頭をくしゃくしゃと撫で続けた。



予想に反して優しくされてしまい、私はひどく安心した。



この私が今日1日で泣いて、笑って、泣いて、


感情を掻き乱されることがこんなにも気持ちいいだなんて知らなかった。




笑わない、


怒らない、


哀しまない。



20歳の私は表情がゆがむなんてことはほとんどなかった。



「仮面の女王」の異名を持つこの私がこんなにも表情をさらけ出したのは産まれて初めてかもしれない。

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