第40話

里桜が取り分けてくれた水炊きにぽん酢をかけてくれた。


いつもは勝手に来る皆にご飯を作るのは私の役目。


勝手に来ておきながら「なんか食べさせてくれ」って平然と言ってくる。


宗平に至っては何かしら文句まで言ってくる。


セレブのお口に合わないのなんて分かってる癖に。


それでも言われれば作ってしまう私。




でも今日は至れり尽くせりでこのままずっとこの姿でいても悪くないかもしれない。


ただ気掛かりなのはやっぱり大学の友達のハン君のこと。


やっと出来た友達なのにいきなり休学するなんて言ったら友達でいられなくなってしまうかもしれない。


かと言ってこの状況をどう説明すべきかも分かんないんだけど。



「・・・お前、何のサークル入ってんだよ?」



里桜が自分の水炊きをよそいながら顔も見ずに聞いてきた。



「ちゅけもの。」



「・・・・・・は?」



里桜が思わず私の顔を見る。


聞き返したくなるのも無理はない。


私だってなんでこんなサークル入ってんだかよく分からないんだから。



「漬物サークルでしゅ。」



「漬物ぉ?!!」



「あーなんか大学っぽ~い。

そういう摩訶不思議なサークルいっぱいあるんでしょ?でも織果ちゃんぽくはないよね~。」



三潴が私のマロニーをフーフーと冷ますように湯気を追いやってくれた。



「ハン君が立ち上げたサークルなんでしゅ。」



「・・・・・へえ。」



「織果ちゃん友達出来て良かったね☆ちょっとそのサークルの女の子今度紹介してよ~。」



「私とハン君2人しかいないサークルでしゅよ?」



「え?そーなの?!残念~。」



ハン君は韓国人で日本の漬物に興味を持ったのをきっかけに留学して来たらしい。


もうキムチには飽きたから今度は日本全国の漬物を制覇するとか。


個性的というよりは天然系のマイペースな男の子だ。

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