第32話

「・・・・はあ・・・・」



瞳子さんにフルネームで指名された宗平は不思議そうな顔というよりも、嫌な予感を捉えたような顔つきだった。



「でも瞳子さん、煙草はほんと辞めて下さい。服に臭いがつく。」



ハイハイと適当な返事で

赤いレザー柄の携帯灰皿に煙草を捨てた瞳子さんは電気自動車の方へと戻って行った。


煙の残り香に宗平が一つ嫌そうな顔をすると、四竃に抱っこされる私の元へと来た。



普通小さな子供に触れる場合、頭をなでなでするのが正しいやり方だと思う。


でもこの宗平は普通じゃない。


小さな私の頬を片手で軽く持ち、親指でふにふにっと唇を押してくる。



「ほんとちっちゃい口。

このまま食べちゃいたいくらいだ。」



うっとりした眼差しで吐息を漏らす宗平に、四竃が目潰しの構えを右手で整えた。


どうしよう、このキモい変態の宗平に少し免疫が出来てきてしまったかもしれない。


イケメンて凄い。




「最後にもう一度抱かせてよオルカ。」



両手を広げる宗平に四竃が私を隠し背を向ける。



「二越サン・・・・今のあんた怖すぎっすよ。

自分の顔鏡で見た方がいいっす!」



そう四竃が言った瞬間、三潴が宗平をスマホで激写した。



「あっはっは!

今度合コン行ったらこの二越ふたごえの顔女の子たちに見せてやろーぜ!!w


なあ一氏いちうじ!!」



「・・・・・・・・」



里桜が気まずそうに咳払いする。


ふと上を見上げると、四竃が三潴に威圧的な目で何かを訴えているのが分かった。


明らかに変な空気が流れる。

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