第16話

居間の机にパスタが並べられるとようやく私は下に下ろされた。


さっきのリンゴを食べた時のように向かいに里桜が座る。


でも私はなんとなく里桜の真横にパスタを持っていき、里桜の隣に座った。


そんな様子に里桜が私の頭をポンと撫でてくれた。


またぽっと胸が熱くなる。



里桜は優しい。その優しさについ甘えたくなってしまう。


パスタを食べている時も何度も私の口を拭いてくれ、また緑茶を作って氷を入れてくれて。


完全におかんだ。これは"おとん"ではない。おかん以外の何ものでもない。


パスタを食べ終えると私は急に眠気に襲われた。


耐えきれない眠気に居間の畳に横になる。


でもすぐにふわっと身体が浮くような感覚があった。



里桜の匂いがする。


ずっとこのまま抱かれていてもいいかもしれない。


私は里桜から産まれてきたの?


そんなトンチンカンなことを思ってしまうくらい安心する。


でも待って。


もし里桜から産まれてきたのだとしたら、

じゃあ里桜の結婚相手は誰??


そう思うとちょっと複雑な気分になった。




私は温かい布団に入れられ眠った。



z z z・・・




「・・・な"、なんだお前・・・


なんでお前が一緒に・・・


ま、まさか・・・貴様っ」




遠くの方からドス黒い悪魔の声がする。



一氏いちうじぃッッッッ!!!!」


「っ??!!!!」



その重低音に起こされ布団から飛び起きると、何故か私の隣には里桜が寝転んでいて、


その上には宗平しょーへーが馬乗りになり殴りかかっていた。


でも里桜が咄嗟に宗平の拳を受け止めた!



バシィィィッッッッ



・・・え?


一体何が起こっているの??


もしかしたら"おとん"が帰って来た?


おとんは宗平なの?


寝起きでもトンチンカンなことを思う私はやっぱり子供だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る