朽ちない誓い

@shiori_o

第1章 再会の予兆

1話 最後の戦場

 轟音が大地を揺るがし、戦場に火の粉が舞い上がった。

 鉄のぶつかり合う音、剣のきしむ音、そして兵士たちの絶叫が無情にま入り混じる。その中に、村雨蓮は立っていた。全身に泥と血を浴び、己の刀を握りしめながらも、彼の瞳はただ一人の男に向けられている――王子・瑞貴。


「ここまでです、殿下……!」


 蓮は剣を振るいながら、敵の兵士たちを退ける。戦況は絶望的だ。王子を守るために連れてきた兵は、すでにほとんどが倒れ、自分もこの場で命を落とす覚悟を決めていた。


 しかし、ただ一つの誓いだけが彼を支えている。


「何があっても、殿下を守る……」


 瑞貴はその言葉を聞き、短剣を握りしめながらも、蓮には何も申せない。


 目の前にいるのは、自分のために命を賭ける忠実な武将だ――いや、それ以上の存在。彼はこの瞬間、胸の奥にしまっていた感情を悟る。


 ……蓮に対する想いは、忠誠や友情を超えたものだと。



 だが、その想いを伝える間もなく、敵軍の包囲は迫ってくる。


「ここまで、だな……」


 蓮が短く呟く。

 王子を守り続けた彼の体力は限界に近づき、最後の一閃を繰り出す力も尽きかけていた。ところが、蓮は絶望に浸るどころか微笑む。


「殿下、貴方様の御命――来世では必ずお守りします。……っ、必ずッ!」

「行く、な……」


 瑞貴は弱々しい声音を放つが、ボロボロの彼には届かない。

 蓮は最後の力を振り絞り、敵の兵士たちの前に立ちはだかった。



「また、必ずお会いしましょう」


その言葉を最後に、蓮の視界は闇に閉ざされた。



 そして、時は戦場とは縁遠い世界へと移り変わる――。

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