第14話:動いてんじゃん。
俺は夢を見ていた。
タコに吸い付かれてる夢、タコが俺の顔にへばりついてきて息ができない、
苦しい、って思ったら目が覚めた。
そしたら、俺の顔のド真ん前にセシルの顔が・・・。
しかも俺のクチビルに吸い付いてるし、タコじゃなくてセシルのクチビルが・・・。
俺は息が苦しくて顔をそらした。
「息で出来ねえだろうが・・・なにやってんだよ、セシル」
「てか、普通に動いてんじゃん」
「おっはよ、未来ちゃん」
「おっはよ、じゃなくて・・・」
「なに?・・・再起動したのか?」
「うん、ほんとは一晩あったら、ちゃんと目が覚めるんだけどね」
「24時間もかかっちゃったみたい」
「そうか・・・心配したんだぞ・・・あ〜・・・よかった」
「もう永久に起きないんじゃないかってさ修理に出そうかと思ってたんだ」
「起きないままだと役立たずでしょ、役立たずは捨てられちゃうでしょ」
「そんなことしないよ・・・電化製品じゃないんだから・・・」
「それにさ、 もう俺、セシルに情が移っちゃってるからな」
「捨てるなんて、そんな非人情なことできなくなってるんだわ」
「そうだよ・・・ダメダメ・・・まだエッチもしてないんだもんね」
「いや、そういう理由だからって訳じゃないからな・・・勘違いするなよ」
「でもよかった・・・」
(たしかにエッチしないままってのは、絶対よくないと思うよな)
「私、元気になったから今日1日私とラブラブして過ごそう?」
「ダメダメ、昨日も会社休んでるんだから・・・病気でも、用事があるわけ
じゃないのに、ズル休みはできないからな」
「仕事をやらないで放っとくと俺の負担がどんどん増えるだけだし」
「だから今日は会社に出勤するからパセリさんとラブラブしてろよ」
「女同士でラブラブなんてつまんない・・・」
「あのな?毎日、ラブラブして働かないでいたら、飯が食えないの」
「給料もらえないとセシルのブラもパンツも買えないんだからな」
「きゅうりょう?・・・まって?」
「あ〜いい・・・検索したくても・・・」
「セシルは俺と離れたくないだろ?」
「離れたくない」
「俺がちゃんと会社に行かなきゃ社長からおまえはいらんって首になっちゃうの」
「よく分かんない・・・」
「まあ、いいわ・・・」
「とにかく今日はパセリさんと一緒にいて留守番してて、ね?」
「分かった・・・でも早く帰ってきてね・・・三秒で」
「あのな、エレベーターの時と同じこと言うな」
「仕事こなして三秒で帰って来れたらギネスもんだわ」
「ぎめす?」
「間違ってる・・・ぎ・ね・すだよ・・・ギネス」
って訳で、一時は心配してセシルだったけど何事もなくて胸をなでおろした。
いつものセシルだから安心して会社に行ってもいいだろう。
でもセシルが再起動するまで24時間もかかったことが、これから起こる
であろうことの前兆だったなんて俺もセシルもパセリさんも誰も知る由は
なかった。
「じゃ〜行って来るから・・・」
「はい、いってらっしゃいのハグ・・・」
「はい、いってらっしゃいのチュー・・・」
「じゃ〜ね、早く帰ってきてね・・・三秒で帰ってきてね」
「十秒くれても無理だわ」
今のセシルの三秒ってのは、なにを根拠に三秒って言ってるんだろ?
まあ、なんでも三って数字はよく使われるからな。
三度の飯、石の上にも三年、三度目の正直とか二度あることは三度って言うし・・・。
三年目の浮気ってのもあるぞ。
宇宙の万物は三つの構造から成り立っていて宇宙のあらゆる問題は三角形と
いう図形と三という数字に集約することができるんだって・・・
って誰かが言ってたな。
「じゃ〜言ってくっから・・・大人しくしてろよ」
つづく。
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