第14話 神久と瀬戸宮について

「はぁー」


 俺は自分の席に着いた後、先ほどの神久の事についてを思い出してため息をついていた。

 正直に言うと両親に話せば簡単に解決出来るんだと思うけど面倒くさい物は面倒くさいからだ。


「おはよう!龍星!」


 俺がそんな事を思っていると穂乃花が笑顔で挨拶をして来た。


「おはよう穂乃花」

「ねぇ?龍星?」

「ん?どうした?」

「えっと。クラスに入った時やけに静かだったけど何があったの?皆小声でコソコソしてるし」


 まぁ、原因が何かって言ったら神久のせいだよな……多分皆あまり余計な事を言えないんだろう。

 神久に目を付けれたい人何ていないだろうしな。


「そうだな。穂乃花は神久和樹についてどう思う?」

「え?どうしてそんな事を聞くのか分からないけど、神久和樹は良くない噂ばかり聞くから私も嫌いかな?女子に目がないとも聞くしね」

「まぁ、そうだよな。じゃあ瀬戸宮雪先輩については?」


 俺が瀬戸宮先輩についての事を聞くと穂乃花は笑顔になった。


「雪先輩!?雪先輩はね私が大好きな先輩だよ!」

「大好き?」


 これは意外な繋がりだな。


「うん!私が冒険者を始めた時の右も左も分からない時に、私が一人前になるまでずっと一緒に居てくれて色々と教えてくれたの!その上ダンジョンでは何回も助けられたの」

「じゃあかなりお世話になった先輩なのか」

「そうだよ!それにね雪先輩ってダンジョン内でも外でも困っている人がいると絶対助けてあげる位優しくてカッコイイ先輩なの!!」

「そっ、そうか……でもそれだったらホワイトギルドに入ろうとは思わなかったのか?」

「実は高校生になったらギルドに入ろうって思ってて、雪先輩にホワイトギルドに入ろうと思ってるって伝えたら絶対にやめた方が良いっていわれちゃったの……」

「それはなんでだ?」

「んー?詳しくは説明してくれなかったけど私の為を思って言ってくれてるのは伝わってたかな?それ以外は聞いて無いかな」


 ん?なんか良く分からないな。

 まぁ、取り敢えず瀬戸宮先輩は良い人ってのは間違いなさそうだな。


「えっと。それでその二人がどうしたの?」

「いや、その二人がってよりかは神久の方なんだけどな実はさっき……」


 俺は先程の出来事を穂乃花に説明した――


「なる程ね……やっぱりあの人って碌な人間じゃなさそうだね……」

「まぁ、そうかもな。少なくとも他の人の事はどうでも良いって感じがしたよ。自分に従うのが正しいって思ってるんだろうね多分」

「はぁ、やっぱりそうだよね……雪先輩も大丈夫かな……」

「瀬戸宮先輩がどうかしたのか?」

「あっ、えっと実はね、私が雪先輩にお世話になっていた時雪先輩は既にホワイトギルドに入ってたんだけどさ、色々と悩んでいたみたいだったの」

「悩むって何をだ?」

「んー?どうやら神久和樹関連で悩んでいたみたいなの。実は私がこの高校を選んだ理由が雪先輩なんだけど雪先輩にそれを伝えたら神久和樹には絶対に関わるなって言われてたし」


 なる程な……そんな事があったのか。


「それでね、龍星も聞いた事あるかも知れないけど今のホワイトギルドは神久ギルドの支援なしでは経営出来ないからさ……」

「確かにそんな事は聞いたけどそれってなんでなんだ?」

「まず前提としてね、光龍ギルドの大きさが10だとしたら神久ギルドが7でホワイトギルドが5くらいなの」


 そうなのか、神久ギルドって意外と小さいって訳では無いのか。

 俺はそう思いながら穂乃花の話を聞き続ける。


「ホワイトギルドって一応最初は神久ギルドの下部に位置してたのが独立した感じなんだけど、理由は分からないけどホワイトギルドに入った将来性のある冒険者は軒並み辞めるか神久ギルドに行っちゃって経営が全然上手く行ってないらしいの」

「なる程……」


 これは間違いなく神久家が手を手を回してるだろ……


「それでギルド経営って莫大な資金がいるから悪循環に陥って神久ギルドに助けてもらうしかないって状況だね」

「大体わかったよありがとう穂乃花」

「うん!」


 何でホワイトギルドは神久に支援して貰うんだ?明らかに神久が邪魔してるのは分かるだろうに……



 ――俺は一人で家に帰っていた。


「とりあえず今日の夜に両親に説明しないとな」


 俺は帰りながらふと瀬戸宮先輩に貰った紙切れを思い出した。


「そうだあの紙切れってなんだったんだ?」


 紙切れを鞄から出した俺は折ってあったのを開いた。


 "直接話せなくて申し訳ありませんが、絶対に神久の話には乗らないでください。光龍ギルドだったら大丈夫だとは思いますがもし何かあれば私に言って下さい。私も色々と準備しているので手助けを出来ると思いますので"


 そう言った内容と瀬戸宮先輩の連絡先が書いてあった。


「んー、まだ分からない事は多いがとりあえず瀬戸宮先輩は味方ってのは確実だな……まぁ、あの時の瀬戸宮先輩の神久を見る目を見れば分かるけどさ」


 ていうか色々と準備してるって何を準備してるんだろうな?

 自分の両親が経営してるギルドの件もあるのに俺の心配をしてくれるって……マジで良い人なんだな。

 こりゃ穂乃花が憧れるのも無理ないな。



 ――俺は今両親と向かい合っている。


「そうれで話ってなんだ?」

「んとね実は今日学校で……」


 俺は父さんと母さんに神久の事を全て話した。


「なる程……それはちょっと厄介だな」

「マジで?」

「あぁ、神久ギルドの方はどうでも良いんだが企業の方は少し厄介でな、大企業だけあって顔が広いからだな」

「まぁ、での龍星の話だとただ断っても何かしてきそうじゃない?だって神久よ?」

「てかさ。神久って実際どうなの?悪い噂が多いって聞くけどさ」

「んー、それは微妙なんだよな。神久って大企業だけあって証拠を全く残さないんだよな、今まで正体を暴こうとした人達も成果を全く得られなかったみたいだしな」


 なる程……大きくなったのはそれだけの理由があるって訳か。


「まぁ、大丈夫だ!俺達がどうにかするから龍星は断り続けて良いぞ」

「そうね。光龍ギルドまでなれば私達でも対処出来なくはないからね」

「ほんとに大丈夫?」

「あぁ、少し大変になるだけで間違いなく神久じゃ光龍ギルドに手を出す事は出来ないからな」

「寧ろこの状況で何かしてくるような事が有れば逆に証拠を残す事になるから迂闊な事はしてこないと思うわよ、そんな迂闊な人だったら大企業まで登り詰めるなんて絶対に無理だからね」

「なる程ね」

「まぁ、光龍ギルドが本気で調査すれば神久とてただじゃすまないと思うしな」

「そうね。内に手を出したのが間違いって事を教えてあげないとね」


 おぉ、頼もしい両親を持ったなと素直に思った。


 ――そうして話し合いを終えた。


「んーでも、どうしよっかな、神久って俺が思っている以上に大企業なのか……まぁ、日本でもトップクラスって言ってたしな」


 俺に出来る事が有ればしたいんだけど……

 悪事の証拠を全く残さないってなかなかやり手って事だし俺が証拠をつかむのは無理だし。


「そうだ!瀬戸宮先輩に連絡してみようか」


 瀬戸宮先輩が何を考えているのかは分からないけど俺達の敵って事はまず無いだろう。

 穂乃花をホワイトギルドに入れようとしなかったのも巻き込みたくなかったからだろうし。

 手札は多い方が良いしそうしようか。


 そうして俺は瀬戸宮先輩に連絡を取る事にした。

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