第13話 新たなトラブル

「おい……マジかよこれ……」


 三日前初配信を終えた俺は言家で一人スマホを手に持ち驚いていた。


 配信直後暫くSNSでトレンドをいくつも取っていた事には流石にビックリしたし、見てくれた人の反応が凄い良かった所も配信して良かったと思った。


 でもさ、俺的に今回は黄金火鳥について流布して美味しいよって伝えようとしたんだが……


「何でレッサーオーガ?」


 いや、まぁ、俺が美味しいって言ったけどさ……あくまで低めの階層での話だし最後にちょこっと言っただけなんだけど。

 

 今SNSを見るとレッサーオーガについて言及されていたりネットニュースの記事にまでなってるし。

 てかレッサーオーガを狩る配信者多いんだよ……ここ二日間配信タイトルを見るとレッサーオーガって文字めっちゃ見るんだよ。

 Bランク冒険者以上だったらソロでも簡単に狩れるモンスターだからってのあると思うけどさ。


「えぇぇ!レッサーオーガ専門店?」


 いややり過ぎでは?

 確かにそこらの高級肉より美味いのは確かだけどさ、専門店まで行くとどうなんだろうか?

 

「ってマジかよ……レッサーオーガがダンジョンに居なかったって??」


 そんな事あり得るのか?レッサーオーガってかなり個体数の多いモンスターだぞ?

 どれだけ狩られたらそんなにかつかつになるんだよ……これって俺が原因だよな。


「……もう知らん。俺はこれ以上レッサーオーガについては気にしない事にしよう。学校行くか」



 ――学校に登校した俺は教室に入った。


「よ!哲夫!」

「あぁ、龍星か。おはよう」


 俺はいつも通り友達である哲夫に挨拶をした。


「そう言えば龍星。お前のおかげで世間は凄い事になってるよな」

「いや、あれは流石に予想外だって」

「ふははは、まぁ、そうだよな俺も配信見てたけど、ただコメントに答えただけで全く意識してなかったもんな」

「全くね。別に俺に害があるわけじゃ無いからいいんだけどね」

「まぁ、そうだな。変わった事が有るとすればレッサーオーガの価値が滅茶苦茶上がったってだけだしな」


 俺達がそんな会話をしていると教室に一際目立った男女が入って来た。

 男子の方はいかにも陽キャって見た目の金髪イケメンで女子の方は黒髪ロングで大人しめだがどこか鋭そうな穂乃花にも負けない位の美女だ。


「なぁ?アレ誰だ?」

「はぁ!?お前マジで言ってんのか?」


 俺が哲夫にそんな事を聞くと凄い勢いで驚いた。


「えっと。マジで言ってるぞ……」

「はぁ。まぁ龍星だからな。えっとな、まず男性の方は日本でもトップクラスの大企業を経営している両親を持つ神久和樹(じんきゅうかずき)だ。数年前に神久ギルドも作っているからかなり有名だぞ」

「神久ギルドねぇ……」


 やべ!聞いた事ねぇよ。

 俺が知らないからトップギルドではないんだろうけど、哲夫のこの反応だと結構有名なんだろうな神久ってのは。


「それで女子の方が瀬戸宮雪(せとみやゆき)でこちらも両親がギルドを経営しているんだ。まぁ、神久ギルドの支援があってやっと経営出来てるらしいけどね。んで二人は幼馴染ってやつで一応この学校の三年生でかなり有名人だぞ」

「そうなんだ。それでその先輩二人も冒険者なのか?」

「そうだぞ。神久の方はランクで言うとCランクになりたてで、瀬戸宮先輩はもうすぐBランクって言われてるな」


 ん?てことは本当に有名人なのか?だって高校生でもう直ぐBランクと言えば穂乃花と同じ位かそれ以上って事だもんな。


「てか何で哲夫は瀬戸宮先輩だけ先輩を付けてるんだ?」

「いや。お前は知らないかも知れないけど、あの神久って奴は権力を使って汚い事も平気でやっちゃう奴なんだよ……イケメンでもそれのせいで人が寄り付かないんだよな」

「なる程ね。それはそうなるよな……でも幼馴染で一緒に居るって事は瀬戸宮先輩も同じなんじゃないか?」

「それがそうでもないんだよな。瀬戸宮先輩は困ってる人がいれば身分とか関係なしに手を差し伸べてるんだよ……噂によると両親のギルドを支援して貰ってるから逆らえないんじゃないかって噂だ。」

「なかなか面倒くさい事になってんだな、一応聞くけど瀬戸宮先輩のギルドって何て名前なんだ?」

「有名度では神久ギルドより少し下だけど、ホワイトギルドって名前だな」


 ホワイトギルドと神久ギルドか……同じ学校の有名人なら覚えて置いた方が良さそうだな。


「んでそんな有名人二人がなんの用なんだろうね?」

「有名人って……お前が言うなよ」


 俺のそんな言葉に哲夫は呆れたようにそういう。

 俺達がそんな会話をしているとその二人がこちらに歩いて来た。


「なぁ?お前がゼロで良いんだよな?えっと新堂龍星君?」

「えっと?そうですけど」

「それじゃあ神久って知ってるか?日本でも大企業なんだけどさ」

「まぁ、一応」


 俺がそう言うと神久はニヤリとして話し始めた。


「だったら話が早いよ。君には神久ギルドに入って欲しいんだ」


 は?何言ってんだコイツ……頭沸いてるだろ。

 何をどう考えたら俺がそっちに行くと思うんだよ。

 大体Sランク冒険者の引き抜きなんてやってる事ヤバいぞ。

 

 隣にいる瀬戸宮先輩は……呆れた様な?と言うかちょっと神久の事を睨んでるな。

 哲夫が言っていた事は本当っぽいなこれ。


 って今はそれどころじゃないな。

 ここは流石に穏便に収めたい……流石に日本でもトップクラス企業なら俺が下手に出るよりも親に相談すべき案件だ。

 うちが日本一のギルドって言ってもギルドと企業は近からず遠からずの関係だかなら……神久との関係値は知らないけど。


「えっと。でも俺既に……」

「まぁ、断ったらどうなるか分かってるよね?俺は神久だよ?」


 俺の言葉を遮って神久はニヤニヤしてそういう。

 これはまともに話す気なさそうだな……面倒くさいな。

 

「はぁ。まぁ、どうでも良いですけど俺がそっちに行くメリットはあるんですか?」

「は?そんな事も分からないのか?うちは神久だぞレベルの高いギルドもある上に日本でもトップクラスの大企業だぞ?もうそれだけでメリットだろ?」


 いや。だからそれの何がメリットなのかって聞いてるんだけど……俺は別に有名人になりたかった訳でもないしお金も全く困って無いんだぞ。

 それに話を聞く感じだと神久ギルドっていい話聞かないギルドっぽいし。デメリットしかないんだよ。


「んと、まぁ、考えておきますよ……」

「ふふ。まぁ時間は必要だよな三日間待つからその時までに答えを出して置けよ。もし断ったら分かってるよね?」


 そう言って神久は何処かに行った。


「はぁ」

「凄い奴に絡まれたな……」

「そうだな。流石に予想外だわ。海外からの引き抜きだったらまだしもまさか日本のギルドから来るとはね……えっと、それで瀬戸宮先輩はなんでまだいるんですか?」


 神久が去ってからも残っていた瀬戸宮先輩に俺はそう尋ねたが瀬戸宮先輩は何も言わずに俺に紙切れを渡して去っていった。


 渡された紙を見るとひとりの時見てとだけ書いてあった。


「何だこれ?」

「さぁ?ラブレターとか?」

「本当にそう思うのか……」

「いや思わん……まぁ、それはそうとして大丈夫なのか?」

「うん。多分ね。」

「だったらいいけど気を付けろよ」

「うん」


 大丈夫と言ったものの面倒くさい事には変わりない。

 まぁ、父さんと母さんに相談してから考えないとな……

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