第10話 黄金火鳥

「んー、なかなか目当てのモンスターが居ないなぁ。まぁ、キングエレファントより個体数が少ないから当然と言えば当然だけどさ」


:マジで何を探してるんだ?

:俺達はもうお腹いっぱいだよ……65層のモンスターを次々と簡単に倒しすぎて……

:↑マジそれ。常識覆るレベルだわ……

:もはや理解不能レベルだね


 流石にそろそろ出てくれてもいいと思うんだけどな。

 目に入ったら直ぐ分かるし見逃してるって事は無いと思うが……


 俺がそんな事を思っていると、前方方向に黄金に光輝く鳥がいた。


「あ!いた!」


:居たって?最初に倒したのと同じようなエレファントキマイラしか居なくね?

:↑俺もエレファントキマイラ二体以外見えないわ


 まぁ、そうかこの距離だとそうだよな。

 エレファントキマイラに比べたら滅茶苦茶小さいし見てる人からしたら認識できないか。


「えっと、そいつらは勿論違うよ。ちょっと待ってて直ぐ片付けるから」


 俺はそう言ってエレファントキマイラ二体をほぼ同時に撃破した。


「エレファントキマイラは置いておいて俺の目当てはアレだよアレ」


 俺は黄金に光輝く鳥……つまり黄金火鳥の方を指さした。


:なにあれ?鳥?

:めっちゃ金ぴかだけど食べれるのアレ?

:美味そうじゃないけどスゲー高そう……

:てか全然襲って来ないけど本当にモンスター?

:↑それは思った。


「あぁ、あれは黄金火鳥って言ってこっちから何かしない限り何もしてこないモンスターだね。手を出さなければ安全だね」


:黄金火鳥?聞いた事ないな

:俺も初耳だわ

:65層なんて行ける人ほとんど居ないし分かんなくて当然じゃない?

:黄金火鳥って聞いた事あるかも?なんか超高級店で三桁万円とかだっけ?

:↑は?高すぎだろ


 黄金火鳥ってそんなに高いのか?俺は自分で焼いて食べた事しかないから分かんないな。


「あ!そうだ!一応皆に伝えておくとこの黄金火鳥って滅茶苦茶攻撃力強いから注意してね。倒す時は一撃で決めないと大変な事になるから」


:いや、だれも戦わないよ

:65層とか行ける訳ねー

:どのレベルのアドバイスだよwww

:俺達には関係ないねw


「まぁ、取り敢えずちゃちゃっと取っちゃうね」


 俺はそう言って全速力で黄金火鳥の元へ向かい羽を切り落として、首もついでに攻撃した。

 黄金火鳥は反撃させると65層で一番強いモンスターだが、防御力が酷く低いので最速で倒す事でとてつもなく簡単に討伐が可能だ。


:もう驚かないわ……

:結局黄金火鳥ってのがどの位強いのか分かんなかったな

:勘違いして戦っちゃう人居そう

:↑そんな奴が65層に行ける訳無くて草


「んじゃ、早速調理していくな」


 そう言って俺は持って来た調理道具で調理を始めた……と言ってもただ軽く胡椒を振って焼くだけなんだけどね。

 

「黄金火鳥の食べ方って色々あると思うけど俺は結局これが一番良かったんだよね。シンプルが一番って事だねー」


:画面越しじゃ全然分からないけどなんか凄く美味そう

:食レポたのむ……

:ダイエット中なのにお肉が食べたくなってきちゃったよ……

:ただ胡椒を振って焼くだけなんだね。

:やべーめっちゃ食いたいかも。


「食レポはした事ないから出来ないので先に言っておくと、黄金火鳥ってさ、鳥だけど肉がマジで柔らかいんだよね。それでいて口に入れると一瞬で全体に肉汁が広がってくるんだよ。正直にいうと食べてみると今までに感じた事ない位びっくりすると思うよ」


:滅茶苦茶食べたくなって来たかも……

:普段余り肉は食べないけど久しぶりに肉を食べたくなって来た。

:さっき昼飯食べたばっかなのにもう腹減って来たわ。


「良く言うじゃん?匂いだけでご飯が進むって。黄金火鳥を食べるまでは何言ってんだって思ってたけど黄金火鳥ってマジでそれなの。脂がのってて量自体は多くないけどそれでも結構満足感凄いんだよ。俺は沢山の肉を食べて来たけどこの黄金火鳥が圧倒的に一番おいしい肉だね。俺の中では」


:滅茶苦茶好評じゃん

:実際に食べれる訳じゃ無いから想像しか出来ないけどゼロが言うなら本当なんだろうな。


 俺が視聴者とコメントを通して会話をしていると丁度良い焼き加減になった。


「そろそろいいかな。んじゃ食べるね」


 俺はそう言って黄金火鳥の肉にかぶりついた。


:うわ、肉汁やば……

:これは音で分かる奴だわ……絶対に美味い。

:映像でもジューシーさが伝わってくるな……

:やべーーーー肉くいてーーーーー

:↑分かる。この際だから黄金火鳥じゃなくても良いから焼き立ての肉が食べたいわwww

:参考までに黄金火鳥と似た様な肉は無かったの?


「んー、黄金火鳥に似た肉か……ちょっと難しいかもな。黄金火鳥ってすべてのバランスが完璧なんだよね。正直このに似たのは食べた事ないかな?」


:マジか……

:高級肉なんて食べた事ないからな……

:↑俺も。俺に至っては高い肉と安い肉の違いわからんかもwww

:じゃあ、低階層でもいるおいしいモンスターっている?


 低階層で美味しかったモンスターか……なんだろう。

 あ!そう言えばいたかもな……レッサーオーガは肉が柔らかくて美味しかったな。

 黄金火鳥とはまた違った美味しさがあるんだよな……まぁ、黄金火鳥と比べたら物足りないけど普通の肉よりは全然美味しかったな。

 見た目から食べる人は居ないと思うけど、普通のオーガだと肉が固いけどレッサーだと部位によっては柔らかくて美味いんだよね。


「んー、あるにはあるけどちょっと人を選ぶかもね」


:何?聞きたい!

:俺も気になる。


「えっと、一応40階層付近で出て来るんだけどレッサーオーガだね」


:え?レッサーオーガ?まじで?

:二足歩行のモンスターはきついかも……

:見た目がちょっとね……

:マジで美味いん?


「うん、普通のオーガは肉が滅茶苦茶硬いから駄目だけど、レッサーオーガって部位によっては滅茶苦茶柔らかいんだよね。俺も数回しか食べた事ないからそこまで知り尽くしてる訳じゃないけど黄金火鳥より簡単に入手できるしよかったら試してみてよ」


:マジか!俺Bランク冒険者だから明日狩に行くわ!

:確かに人を選びそうだけど俺は全然大丈夫だわ!食べたい。

:↑それな!美味ければ何でもいいわ!

:こりゃ明日からレッサーオーガ狩始まりそうだな……

:↑確かに。元々レッサーオーガは価値の薄いモンスターだったのに一気に価値上がりそう。


 そんな会話をしていたが遂に黄金火鳥を食べ終わった。


「ふぅー、じゃあ目的も達成したしそろそろ終わるな」


:お疲れ……俺は感覚がマヒしたわ……

:↑ほんとそれ。

:お疲れ様です。

:マジで面白かった。今後も配信よろしく。

:ダンジョンでモンスターを食べる配信って意外と少ないから楽しかった。

:次回も楽しみにしています

:凄くカッコよかったよゼロ!また配信見に来るね!!!


「えっと。じゃあ終わりますね。見てくれた人ありがとうございます」


 そうして俺は配信を終えた。


「配信って意外と悪くないな」


 コメントの人達と話すのも楽しかったし、俺がダンジョンに潜って見つけた事を共有するのも新鮮で楽しかった。

 そこまで高い頻度で配信する事は無いと思うがちょいちょい配信を続けたいなと俺は思った。

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