第7話 ミノタウロスを倒せ!

「うおおっ! 喰らえっ! 胴回し回転蹴り!」


 相手が大きいから、ちょっと踏み込みを見誤った! でも大丈夫! ミノタウロスの顔面に足の底がぶつかり、ミノタウロスはブリッジのように仰け反った。


「喰らえっ! かかと落とし!」


 ミノタウロスの顔面に右足を乗せて、地面に叩きつけてから、間髪入れずに遠心力の加わった左足のかかとを脳天に叩きつける。


 ミノタウロスはロケットのように吹き飛んでいった。


「ala-la! あっけない」


 ●!?

 ●!?

 ●なんだいまの

 ●暴力の権化だ

 ●頭おかしい

 ●そのアララっていうのやめなさい


「とまぁ! この清水翼ちゃまにかかればこんなもんよ!」


 ●こいつのステータス気になりすぎる

 ●初配信ってんだからまだそんな高くないと思いたいけど

 ●変なスキル持ってそうよな


「ぼくちんのスキルが気になるにょ? しょうがないから見せてあげるにょ」


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 清水翼

 年齢  19

 腕力  369

 脚力  258

 敏捷  300

 器用  250

 魔力  10

 スキル なし

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 ●スキル持ってないのか

 ●えぇ……

 ●この人頭おかしい…

 ●でも初期値がありえないほど高いよな

 ●平均2桁だもんな


「ダンジョンってのはいいね! ぼくちんが誰よりも強くなれるって可能性に満ちてんだからさ! そういうのなんて言うの? 俺の独壇場?」


 ●ほんとにすごいから変なこと言えない


「おっ!」


 ミノタウロスが起き上がった。


「そうこなくっちゃ〜! 面白くなーい!」


 ばつん、と踏み込むと、ミノタウロスは一瞬で俺の前に現れていた。拳をがちりと握っており、風圧とともに殴られる。


 べきり、と骨が折れる音がした。


「いってー!」


 めがさめてくる! これいいね! これほんとうにいいね! だいすきになってきた! ぼくちんのあそびばここにきーめた! あたまがぐわぐわするけど、たのしくてたのしくてはっぴーではっぴーでしかたないなあ!


 ●死んだか…?

 ●死んだやろなあ


「ala-la! こんなつよつよぱんちあびてもかめんはこわれないんだなぁ」


 ●生きてるのか…

 ●死んどけよ人として


 しんぞうがばくばくなってる。

 ほくちんのしんぞうがばくばくなってる。

 ぼくちんのたましいが、このこころが、つよく……強く! 強く滾れと俺に言うっ!


「痛みと快楽は共鳴しあってハッピーを導くんだぁ。ala-la! 俺の魂呼び起こしちゃったな」


 ミノタウロスはブルルと唸って、また跳躍にて間合いを詰めてくる。


「秘技!」


 拳が繰り出されると、手を手刀のような形にして、すこし凹ませ、ミノタウロスの大きな拳に空気を含ませるようにして、3センチ間を開け、押し付ける。


「“流れ”」


 バックパックからノコギリを取り出し、腕に押し付け、かかとを叩きつけてから思い切り引く。腕に傷をつけるときは……横ではなく縦に……!


「“縦裂き”」


 行動に名前をつけると、憶え易い。


「ala-la! 大事な武器が傷ついてショックだね。でもね、俺も大事な家族奪われてショックだったんだ。おあいこって事にしてねん」

「ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!」

「いやか。そりゃそうね。ごめん」


 何度も何度も……。心が揺れて……揺れて……。愛していた人たちを奪われた苦痛ばかりが頭の中で繰り返されて、幸せだったはずの日常のひとつも思い出せなくなった……!


「果てそうか」


 痛いだろうな。そりゃあいい。

 楽しいところなんて……天国なんて……。


「お前は知らぬまま……」


 ──死んでゆけ。


 ミノタウロス3分足らずで討伐完了。


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