告白
きょうじゅ
ルクレツィアの陵辱
告白
結末、あるいは伝承として残ったもの
そのスキャンダルはまさに激震となってタルクィニウスを襲った。彼の血を分けた息子、つまり王子が、身内である王族の友人の、うら若き妻を強姦したというのだ。被害を訴えた女の名は、ルクレツィア。
ルクレツィアは語った。ある夜、王子は彼女の夫の留守を知りつつ、ルクレツィアの家に忍び込んできた。人を呼びますと言うと、剣を突きつけて脅された。
お前を殺してから犯し、隣に男奴隷の死体を置いて並べて姦通したように見せかけ、お前の夫の名誉を俺が守ってやったのだと市民たちに宣言してやろうか。
それでわたくしは、死して姦婦の汚名をむざと着せられるよりは、恥辱に耐えて真実を白日に晒し、その上で死することに致しました、どうかあの憎き王子に、復讐の鉄槌を。それだけがわたくしの願いでございます。
それだけ言った後、ルクレツィアは短剣で自らの胸を貫き、その悲しき命を散らせたのであった。
そこから始まった一連の出来事はまさに革命というべきものであった。ローマ元老院は果断に判断を下し、王子と父王タルクィニウスのローマ市追放を宣言した。タルクィニウス王はそのとき遠征先にいたため、弁明の機会すら得られぬまま、異国への政治亡命を余儀なくされた。例の王子も亡命して父と合流しようとしたのだが、その途上で政敵に追い詰められ、命を落とした。
こうして、ローマは王政を廃し、共和制を創始したのであった。ここに始まる共和政ローマの歴史は、のちの初代皇帝アウグストゥスによる帝政の創始に至るまで、爾後数百年間に渡ってローマの最盛期を築いてゆくことになる。
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