第59話 高堂空
★高堂空(side)
「はぁ、暇だな……」
今日は明香里と結衣は二人で遊ぶって言ってたし、美月さんも哉太も用事があるらしくて俺はする事が無い。
「学校で話す男子もいるけど普段遊んでないしな……」
遊びに誘えないわけではないけど学校で話す程度の友達を急に誘うのもなーって感じだ。
大体何かしたいことがある訳でもないしな。
哉太の他に普段一緒にゲームをしている人達も親戚の家に行くって言ってたり、彼女とデートとか言ってたもんな……
「彼女か……」
俺も早く欲しいんだけどな……
結衣か美月さんか明香里の誰でも良いから告白してみようかな……いや明香里はまずいか。
三人共可愛いから好きだし付き合いたいけど明香里は義理とは言え妹だから最初は難易度が高いというかリスクが大きいよな。
「でもやっぱり止めておこう……」
結衣は昔から一緒に居るから大丈夫だとは思うけど仮に告白して失敗したら気まずくなった時が怖い。
明香里に関しては家でも顔を合わせるから親にまでバレる可能性があるしな。
大体この二人は小さい頃から一緒に居るから失敗した時のリスクが大きすぎるよな。
美月さんはまだ一年ちょっとだけど哉太の幼馴染って事もあって一番失敗する可能性が高いと思っているし……
とはいえ何となく三人が俺の事を好きなんじゃないかって思う事は結構あったから絶対に無理とは言えないと思ってるんだけど……まぁ、とにかく今は俺以外の仲がいい男が居るって感じでもないからそんな要らないリスクを負う必要もないよな。
「でも結衣に関しては最近あいつと良く一緒に居るしな……」
本人は友達って言っていたが実際の所ちょっと不安に思っている。
だって友達と言う割には俺よりも距離感が近い感じがするしな……まぁ、優しい結衣が友達のいないあいつを気遣って仲良くしてあげてるって可能性もあるんだどな……ていうかその可能性が一番高いと思っている。
大体結衣は友達も多いしな。
明香里は見たことないが、美月さんがあいつと話している事も見た事はあるが、たまにだし時間もちょっとだからそこは気にしないでも大丈夫だろう。
「はぁ、こんなことを考えるのはやめよう」
そう言えば中学1の頃は結衣が男友達と仲良くなるたびにこんな感じだったよな……
でもその結果本当にただの友達でそれ以上でもそれ以下でもないってパターンを繰り返してたっけ。
まぁ、幸いにも結衣にその事を気付かれた事はなかったけどな。
大体結衣も距離感を保っていたのはそうだったしな……
「いやでもアイツとは今までの奴らより明らかに距離感が違うよな……大体ボディータッチは絶対にしてなかったしな」
まぁ、アイツが体調不良だったってだけだよな……
俺がそんな感じでイライラしながら歩いていると哉太とその彼女が居た。
哉太の彼女は写真で見たことがあっただけだが、実際に見るとちょっと可愛いと思った。
まぁ、当然結衣や美月さん、明香里と比べたら全然だけどな。
今日は彼女と遊ぶって言ってたけどデート中かな?
挨拶くらいはしておくかな、暇だし折角見かけたんだし。
俺はそう思い声をかけた。
「よ!哉太!」
「あぁ、空か」
「えっと……その子が彼女だよな」
「そうそう、この子が俺の彼女の前嶋凛(まえじまりん)だ。それでこいつが凛には話したことがある俺が一番仲よくしている友達で高堂空だ」
哉太が俺と彼女の紹介をした。
「えっと。啓太君からは聞いています。高堂さんよろしくお願いします」
初対面だからとはいえ同級生なのにちょっと堅いな……そう思いもしたけどそんな気にする事でもないか。
「俺の方も哉太から聞いてたよ。よろしく、前嶋さん」
「はい。よろしくお願いします」
「ははは、凛はちょっと人見知りな部分があるから慣れるまではちょっと堅いけど気にしないでくれよ」
「そうだったんだな。ちょっと堅いなとは思ったけど人見知りだったんだな。まぁ、俺は気にしてないから大丈夫だ」
「すいません助かります……」
「まぁ、そんな感じだな。それで空は何をしてたんだ?」
哉太がそう俺に聞いてきた。
「何って……特に何もしてないな。暇だしちょっと散歩でもしよっかなくらいの気持ちで歩いてただけだ」
「今日は皆遊べなかったのか?」
「まぁ、そうだな。いつも遊んでた三人は皆用事があるらしいし、ゲーム友達は哉太も知ってる通りだな。そういう哉太は二人でデートか?」
「あぁ、俺たちはデートじゃないぞ。な、凛」
「そうですね……今日はデートじゃないですね」
二人で出かけていてデートじゃないならなんだって言うんだろうか?
いや、でも二人で出かけただけでデートって言うんだったら中学生の頃は俺は結衣と明香里と何回もデートした事になるか……
そんな事を思いつつも返事をした。
「それじゃあ何をしてたんだ二人は」
「俺たちは久しぶりに中学生の頃仲良かった人たちで集まって遊ぼうって事になったんだ。それで今は待ち合わせって訳だ」
中学生の頃の友達か……今思えば俺はずっと結衣と明香里と居たせいで中学生の頃は男友達が数人しかいなかったしそれもかなり浅い関係だったんだよな。
そんな訳で高校になった今は中学生の頃の友達とは一切話さなくなったな。
「そうだったんだな」
「あぁ!ってほら!丁度今来たみたいだな」
「そうだね」
そう言って二人は俺の後ろに向けて手を振った。
俺も振り向いてみるとそこには大人しそうな男女三人が居た。
「三人共久しぶり」
「あぁ、久しぶりだな哉太!」
「久しぶり」
「久しぶりだね哉太君。それでその人は?」
一人の女子がそう言って俺の事を聞いてきた。
「あぁ、こいつは高校の友達で今たまたま会ったんだ。名前は初めて教えるけど息の合う友達が出来たって言っただろそれがこいつで、高堂空って言うんだ」
哉太はそう紹介してくれたけどやっぱりちょっと気まずいし早めに帰った方が良さそうだな……
俺はそう思って言った。
「そうそう、たまたま会ったから声をかけただけなんだ。まぁ、俺はそろそろ行くわ」
俺がそんな事を言うと一人の男が言った。
「どうせだったら一緒に遊んで行かないか?哉太からは空の話は聞いてたしな」
この男は大人しそうな見た目で結構コミュニケーション能力があるというかグイグイくるタイプみたいだな……
「でも迷惑だろうから……」
俺がそう言うと哉太の友達の二人が言った。
「俺は大丈夫だぞ」
「私も別に気にしないよ。哉太君と美月ちゃんの友達なんでしょ」
それに続いて哉太と前嶋さんも言った。
「私も大丈夫だよ……ちょっと緊張するけど哉太君と美月ちゃんの友達だし……それにこの性格も直したいから……」
「まぁ、皆がそう言ってるなら大丈夫だぞ空」
哉太の友達だけあって皆凄く良い人っぽいな……
皆がそう言ってくれるんだったら俺も一緒に行くか。暇だったし丁度良いか。
「なら一緒に行かせてもらおうかな」
「おう!じゃあ行こうか!」
男の一人が俺の肩に手を置いてそう言って来た。
そうして俺たちは六人で歩き始めた――
「そういえば今日は美月ちゃんはこれなかったの?」
確かに……中学生の頃の友達と会うって哉太から聞いたときはじゃあ美月さんも来るのか!そう思ったんだけど来なかったしな。
因みに今そう言った女の子は花山(はなやま)さんだ。
「っぽいな。美月は他に用事があるらしいぞ。詳しい事は聞いてないけどな」
「そっかー俺も美月さんに会いたかったんだけどなー。なぁ哉太?美月さんって彼氏っているのか?」
哉太にそう聞いた男が三国(みくに)さんだ。
この人も美月さんの事が好きなのだろうか……
「んー、そんな話は聞いてないな。てかそれは俺から言う事じゃ無いだろって。仮にいたとしてもそれは美月から言う事だろ」
「まぁ、それもそうだな。てかあんなに可愛いんだから彼氏がいない方がおかしいけどな……」
「おいおい、お前……美月さんの事はもうあきらめたって言ってなかったか?」
「振られたとき言ったようにあきらめたぞ?だからと言って彼氏が出来たかどうかは気になるだろ。その時は普通にお祝いしてあげたいからな」
三国さんに美月さんの事をあきらめて無いのかって聞いたのが内藤さんだ。
振られたって事は三国さんは美月さんに告白したんだな……それで振られたのか。
ていうか振られたのに、応援できるのか……俺には無理だと思うな。
……てか俺が居るのにそんな話をされるとちょっと気まずいって。
そんな事を思っていると花山さんが言った。
「えっと、男子たち?高堂君もいるんだから止めようね?気まずいでしょ?」
「それもそうだな。ごめんな空」
「すまん」
「いや、大丈夫だよ」
それから俺たちはカラオケに行ったりして遊んだ。
◇
――その日の夜。
「やっぱりいつものメンバーで遊んだりゲーム友達とゲームをしてた方が楽しいな……」
哉太の中学の頃の同級生と遊ぶのも悪くはなかったけど、楽しかったかと言われたらちょっと微妙だった。
それに三国さんはことあるごとに美月さんの事を話していてちょっとうるさいなって思っちゃったしな。
まぁ、彼が美月さんの事をあきらめたってのは本当なんだろうけど……
「まっ!いいやとにかくこの後ゲームをする約束をしてるちょっと近くにある自販機で炭酸でも買って準備しとくか!」
エロゲのモブに転生したので普通に暮らそうとしてたらいつの間にかヒロイン達に好かれていました。 羽川 空 @hanekawa-sora
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