第39話 遠坂結衣と神道真理奈の邂逅
★遠坂結衣(side)
――私は空、明香里ちゃん、哉太君と一緒に帰った後に塾から連絡が来た。
どうやら作っていたプリントが完成したとの事だったので私は取りに行く事にして今はその帰りだ。
「上手くやってるかな?美月は……」
美月が慶君とバイトに行くと聞いて私と明香里ちゃんは頑張れと言って送り出した。
美月が上手くやれればいいけど。
まぁ、そんな私もまだまだ全然なんだけどね……私は積極的に行っているつもりだが実はまだちゃんとした形で手すら繋いだ事がない。
私的にはキスもしたいと思っているんだけど……
私ももっと頑張らないとね……
私がそんな事を思っていると見覚えのある人を見かけた。
「あ!あの人は!!!」
あそこまで美人な人を見間違えるわけがない!
あの人は間違いなく慶君のお母さんだ!!!
私の前方で慶君のお母さんが歩いていた事に気が付いた。
どうしよう……話しかけてみようかな……でも急に迷惑かな?
仕事中かも知れないし。
いや、そうだとしても挨拶位はしておこうかな。
それだったら一分もかからないしね。
私はそう思い慶君のお母さんに話しかけた。
「あ!あの!!!」
私が話しかけると慶君のお母さんはこっちを向いた。
「えっと?どうしたの?」
「あ、私は遠坂結衣って言います!慶く……神道慶君と仲良くさせていただいています!たまたま見かけたので挨拶でもと思ったので……」
私はやっぱり迷惑だったかな……と思って最後は小さな声になっていた。
「慶の友達?どうして私の事を知って……あ!もしかして、なる程……そっか。慶のお友達ね!わざわざありがとうね声をかけてくれて」
「は、はい!」
私の心配とは裏腹に慶君のお母さんは素敵な笑顔でそう言って来た。
本当に素敵な女性だな……私はそんな事を思っていた。
「結衣ちゃんね。私は慶の母親の神道真理奈(しんどうまりな)って言うのよ。呼び方は何でも良いからね」
「分かりました。それじゃあ真理奈さんで大丈夫でしょうか?」
「勿論大丈夫だよ」
「ありがとうございます!」
「うん♪」
最初は緊張したけど話してみると凄く話しやすい人だな。
それは慶君もそうだったしやっぱり親子なんだな……
でもこれ以上邪魔する訳には行かないよね。
私がそう思って別れようと挨拶をしようとしたら先に真理奈さんが言った。
「結衣ちゃん?今から忙しい?」
「え?いや全然暇ですけど……」
「良かったら今日は家で晩ご飯を食べて行かない?」
え?
私はそう言われてびっくりし過ぎて声が出なかった。
慶君の家でご飯……
断る理由なんて全くない……いや寧ろ絶対にお邪魔したい。
「いいんですか?」
「勿論よ?でも結衣ちゃんの家にはちゃんと連絡してね?いきなり同級生の男子の家で夕ご飯を食べて帰るって言っても許可が出ないかもしれないし、その時は駄目だけどね」
「そうですね」
私の両親も慶君の事は知っている。
あの時助けて貰った時にちゃんと話したしね……両親が直接慶君にお礼を言うと言ったけどあの時の私は自分の気持ちも整理出来てなかったし、それ以上に何故か慶君と両親が会うのが恥ずかしかったから私からお礼をするからって止めさせたんだよね……
勿論その事は慶君にも後日言って気にしなくて良いって言ってくれたけど……
お母さん達に慶君の家で食べるって言っても許してくれるよね?
私はそう思いお母さんに連絡する事にした。
「それじゃあ少しだけ電話して来ても良いですか?」
「勿論よ」
それから私は真理奈さんから少しだけ離れて電話をかけた。
『あ!お母さん?』
『どうしたの結衣?』
『えっと。今日の夕食ってもう作ってる?』
『ううん。これからだよ?それがどうかしたの?もしかして食べたい物があるとかなの?』
『そうじゃなくて……今日の夕食は他で食べて帰ってもいい?』
『他って……高堂さんの家?それだったら別に大丈夫だけど』
空の家で食べた事も何度かあるしやっぱりそう思っちゃうよね。
『違くて……その……前に助けてくれた神道慶君の家なんだけど……』
『神道君の?どうして急に?』
『それが、たまたま道で神道慶君のお母さんに会って誘われたの』
『ほんとに?まぁ、結衣から聞いてる感じ神道君が良い子って事は分かってるし恩人だから勿論大丈夫だけど……一応神道君のお母さんとちょっと話しても大丈夫?』
『え……あ!うん聞いてみるよ』
私はそう言って真理奈さんにその事を伝える事にした。
「真理奈さん」
「どうしたの?」
「お母さんが真理奈さんと話してみたいって言っていたので……」
「そうなの?勿論大丈夫だよ」
「それじゃあ電話変わっても大丈夫ですか?」
「うん」
そうして私は電話を真理奈さんと変わった。
「もしもし……はい……そうです!」
何を話しているんだろうか?
「あ!結衣ちゃん?ちょっと待ってね少し話してくるからね」
そんな事を思っていたら真理奈さんが言って少し離れて行った。
――それから暫く時間が経った。
「思ったより長いな……」
そんなに話す事あるんだろうか?
「結衣ちゃん。待たせてごめんね。電話返すね」
帰って来た真理奈さんは笑顔でそう言って来た。
「いえ。大丈夫ですよ」
私はそう言って再びお母さんと電話で話す。
『お母さん?』
『結衣?真理奈さんって凄く良い人だしちゃんとお礼は言うんだよ?』
『うん。それは当然分かってるよ』
『それじゃあ、失礼のないようになら楽しんできてね』
『分かったよ』
そうして電話を切った。
「そうれじゃあ行こうね」
「はい!」
そう言って私と真理奈さんは歩き出した。
「そう言えば慶君って今はバイトですよね?」
「そうだよ。あの子ったらバイト何てしなくて良いって言ってるんだけど聞かないんだよね……自分で欲しい物は自分で買うってね」
「それは私も聞きましたけど凄いですよね……」
「そうね。しっかりした子で私も嬉しいよ……それで結衣ちゃんって慶の事どう思ってるの?」
「え?慶君ですか?」
どう返事をすればいいんだろう。
流石に好きです!何て言えないし……
でもだからと言ってどうとも思って無い何て冗談でも言いたくないし。
私がそんな事を思って慌てて迷っていると真理奈さんが先に口を開いた。
「ふふふ、そっか。そんなに考えなくても大丈夫だよ。それよりこれからも慶の事をよろしくね。あの子も学校楽しいって言ってたしきっと結衣ちゃんのおかげだね」
「え?私のおかげ?」
私がそう聞き返すと真理奈さんは微笑んで言った。
「多分だけどね。さっき結衣ちゃんのお母さんと話してそうなんじゃないかなって思ったのよね」
「そ……そうなんですね……」
どうしてお母さんと話してそう思ったのかは分からないが私はそう言われて凄く嬉しくなってそんな事を聞く気は無かった。
――それからは真理奈さんと会話しながら歩き続けていた。
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