エロゲのモブに転生したので普通に暮らそうとしてたらいつの間にかヒロイン達に好かれていました。

羽川 空

第1話 モブ転生した俺

 この世界はエロゲの世界だ。


 一ヶ月前に俺は転生した……信じられないが事実なのだ。


 だってほら……教室で一際目立っている集団がいる。

 俺はあの集団を良く知っている。


 美少女に囲まれているのが高堂空(こうどうそら)だ。

 エロゲの主人公と言えば平凡なルックスが定番だが、高堂はまさに平凡って感じだ。

 それでいて人の気持ちに鈍感なのだ。


 その隣で高堂を冷やしているのが所謂、親友ポジの酒井哉太(さかいかなた)だ。

 高校一年生の頃からの友達で、いつも高堂の近くにいる盛り上げ役だ。

 見た目はチャラいが良い奴だ。


 そして高堂の幼馴染で高堂に恋している遠坂結衣(とうさかゆい)だ。

 遠坂結衣は昔から高堂の事が好きで、お世話好きで元気な性格だ。

 コミュニケーション能力が高く、沢山の友達がいてよく色々な人と話している。

 

 次に宮本美月(みやもとみつき)だ。

 宮本美月はおっとりしてて優しいキャラだ。

 それでいて一応酒井の幼馴染なのだ。

 ゲームだと詳しく語られていなかったが、お互いにどう思って居るのかは分からない。

 いや、適当にやり過ぎて覚えてないだけかもな……

 まぁ、でも少なくとも宮本は高堂の事が好きなはずだ。

 改めて思うけどややこしい設定だな……


 最後が今ここにはいない、一つ下の高校一年生で高堂の義妹である高堂明香里(こうどうあかり)だ。

 まぁ、あれだな、しっかりとした妹キャラって感じだ。

 男子を寄せ付けないクールな性格だったはずだ。


 勿論当たり前だがヒロインの三人は滅茶苦茶ルックスが良い。


 このエロゲにはBADエンドが存在しないらしい。

 竿役が居たり、ヒロインが死んだりみたいな暗いストーリーが一切存在していないのだ。

 ただ超が付く程鈍感な主人公にショックな事を言われたり、ヒロイン達と喧嘩をしたり、みたいな展開はあった気がする。

 このゲームでは選択肢が無い時は主人公が滅茶苦茶鈍感になる……まじでなんでだよって感じだ。

 俺もそれで凄くイライラしていたしな。

 

 そしてこのエロゲは各ヒロインエンドとハーレムエンドの4つのエンドしかないとの事だった。

 

 ここまで言ったが俺は別にこのエロゲの事は詳しくない。

 友達のお勧めで軽くやっていただけで、ストーリーはちゃんとは読んでいないから今後の展開とかも分からん。

 てか主人公へのイライラのせいでストーリーを読む気を無くして、直ぐにやめてしまった。

 だからはっきり言ってヒロインや主人公の事すら余りよく分かっていない。


 そして一番重要な俺の事だ。

 俺は……ただのモブだ。名前は神道慶(しんどうけい)。

 マジで本編では名前があったかも分からないモブだ。

 モブなのに見た目はちょっとイケメンで少しモテるんじゃないかってレベルだ。

 ふぅー、そこは普通に嬉しいよ。


「所で俺はこの世界で一体何をすればいいんだよ……」



「――やべ!食べ物切らしてるじゃん……」


 今の俺は家で一人暮らしをしている。

 両親が同じ会社で働いていて二人そろって海外出張に行っているからだ。

 

「雨が降ってるし今日はコンビニで弁当でも買うか……」


 そうしてコンビニで弁当を買って帰っている途中、公園でずぶ濡れになってる少女がいた。


「なんだアレ?」


 誰かは分からないけど流石に放っておけないよな……

 絶対に風邪ひくと思うしな。


「なぁ、風邪ひくぞ?何してるんだ?」


 俺がそう言うと少女がこちらを見た。

 

「神堂君?」

「え?結衣……さん?」


 どうなってんだこれ……

 何でこんな所に……ヒロインである遠坂結衣(とうさかゆい)が居るんだ?


「えっと、何してるの?風邪ひくって」

「ちょっとね、嫌な事があってね……」


 嫌な事か……良く分からないけど早く帰って貰うか。


「そっか、でも明日も学校あるしさ、帰って早くお風呂にでも入った方が良いよ?」


 俺がそう言うとジトーっと俺の事を見て来た。


「そこは何があったの?とかじゃないの?」


 心配していたけど……意外と元気そうだな。


「思ったより大丈夫そうじゃん……じゃあ何があったの?」

「大した事じゃないけどね、知り合いが私との約束を忘れて友達と遊びに行っちゃっただけ」


 知り合いって高堂だよな?

 まぁ、あの高堂だったら全然しでかしそうな事だな……


「それで落ち込んでたのか?」

「落ち込んでは無いよ……別に今日が初めてじゃないし……」

「じゃあ、なんで傘も差さずにこんな所に居るんだよ」

「それは今日家の鍵を持って出るのを忘れて、親が帰って来るまで入れなかったの、いつもはその知り合いの家にお邪魔するんだけど今日は行きづらくてね」

「そうか、親はいつ帰って来るんだ?」

「あそこ」


 そう言って結衣さんが指を指した方を見たら、大人の女性が仕事から帰って来たところだった。


「あの人がどうした?」

「アレが私の家」

「って事はあの人が母親って事か?」

「そう言う事」


 俺の家から結構家近いんだな……


「ふーん、じゃあ早く帰りなよ」

「そうだね、ありがとう」

「俺は別に何もしてないぞ」

「さっき落ち込んで無いって言ったけど少しブルーな気分だったからさ……でも元気出たよ」


 よく分からないが元気が出たんだったら良かったのかな?


「そうか……」

「早くお風呂入りたいなー」

「なら早く帰えればいいんじゃないかな?」

「ちょっと私に対して冷たくないかな?」


 いやだって早く帰らないと弁当冷めるし……てかもう冷めてるな。


「そんなつもりは無いけどな」

「そうかな?」

「別に俺が結衣さんに冷たくする理由なんてないでしょ?」


 俺がそう言うと結衣さんは怪訝そうな顔でこちらを見た。


「そう言えば何で結衣呼びなの?」


 あー、確かに……

 めっちゃ無意識だったわ。

 ゲームの時は全員名前で呼んでたからだな。


「あー、確かに無意識にそう呼んでたわ……遠坂さんって呼ぶよ」

「別にやめろとは言って無いけどね……気になっただけだし変える必要も無いよ」

「そっか、ならこれからも結衣さんで呼ぶよ」

「うん、それじゃあ私は帰るから、ばいばい慶君」

「あぁ、風邪ひくなよ」

「大丈夫、大丈夫」


 そう言って結衣さんは軽く手を振って家に帰って行った。


 コミュニケーションおばけの結衣さんらしいけどさ……いきなり名前で呼び合うのは距離感バグって無いか?

 まぁ、俺が言える事じゃないか……今後は気を付けよ。


 まぁ、親友キャラの酒井の事もかなた君って呼んでるから結衣さんからしたらそれが普通なのかな?


「まぁ、いいや帰ろ」

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