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「久美子ちゃんは、私の推理、どう思う?」

 真剣な顔をしてさゆりちゃんは言った。

 久美子は正直なところ、その推理があっているかどうか、まるでわからなかった。でも、あの頭のいい関谷さゆりちゃんがそう言うのだからそうなのだろうと、久美子は思った。

「……うん。私もそう思う」

 久美子は言った。

 すると、さゆりちゃんは、じっと、久美子の目をしばらくの間、真剣な表情のまま覗き込んでから(まるで久美子の嘘を見抜こうとしているかのようだった)その大きな目を閉じて、ふーと息を吐くと「……良かった」と小さく笑って久美子に言った。

「俺も関谷の意見に賛成だな。闇闇はおそらく、その百年前の○○町の住人たちで間違い無いと思う」と、真っ白な天井を見ながら信くんが言った。

「……きっと成仏できなかったんだろうな。まあ、当たり前か。いきなりじゃな。無念だよな」信くんが呟く。

「……随分と物わかりがいいんだね。如月くんの嫌いなオカルトなのに」さゆりちゃんが言う。

「自分の目で見ちゃうとな」

 さゆりちゃんを見て、信くんがにやっと笑う。

「見る? 信くん、闇闇を見たの?」驚いた顔をして、久美子が言った。言葉は発しなかったけど、さゆりちゃんもとても驚いた顔をしていた。

「ああ、見た。昨日の夜にな」

「どこで!?」

「どこで!?」

 と久美子とさゆりちゃんが声を揃えて信くんに言った。

「……お前ら、そんなに顔近づけるなよな」

 ちょっとだけ顔を後ろに動かして信くんは言った。(久美子とさゆりちゃんは思わず身を乗り出して、信くんにどこで!? と言っていた。二人は顔を赤くして、お互いに一度目を合わせてから、自分の体の位置を元の場所に戻した)

「昨日の夜中のトイレの帰りだよ。ボールを蹴る音がしたからさ、誰だと思って校庭のサッカーのゴールポストのところを見てみたらさ、黒い闇のような奴が、ボールを蹴って遊んでたんだ。一人で。しかもそのサッカーボール。俺の持っているボールにそっくりだったんだよ。君が悪くてさ、思わず、声を出してしまってさ、危なく見つかりそうになったんだけど、慌てて隠れて、まあなんとかなったんだよ」と信くんは自分の話をまるで英雄譚のように自信満々の態度で久美子とさゆりちゃんの二人に話した。

 さゆりちゃんはその話を聞いて、呆れた顔をしてから、信くんの耳を持って引っ張った。

「いてーな、なにすんだよ! 関谷!」と信くんは言った。

 そんな信くんに「そうなんだ。良かった。信くんにも『闇闇がちゃんと見えたんだね』」と闇闇が見えるのが自分だけではなくて良かったと思って、久美子はほっと胸をなでおろした。(……あれ。でもどうして信くんは、あの黒いもやもやの闇川さんは普通の人間に見えたのに、闇闇が闇闇として、認識できるようになったんだろう。……えっと。どうしてだろう?)

「久美子ちゃん。余計なことは考えなくていい。今は、この『閉ざされてしまった世界から、私たちが抜け出すことだけを考えて』」とさゆりちゃんは久美子に言った。

「……うん。わかった」久美子はそう返事をした。

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