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「……それを確かめたかった。どうやら私に見える世界には、闇闇のことを闇闇として、認識できないようだったから」とさゆりちゃんは言った。
「どういうこと? 説明してさゆりちゃん」久美子は言う。
すると関谷さゆりはこくんとうなずいてから、自分の憶測の推理の話を三島久美子にしてくれた。(如月信くんも一緒に聞いていたけど、闇闇が見えない信くんは、さゆりちゃんの話をいつもの関谷の空想話だろう、と思ってあまり真剣には聞いていないようだった)
そのさゆりちゃんお話によると、どうやらこの世界で闇闇を目で見て、きちんとそれが闇闇だと認識できるのは、今のところ三島久美子(つまり、私だ)ただ一人だけらしい。そのほかの人物にはその人が闇闇であっても、そうとは認識できずに、ずっと前から当たり前のように、その人(偽物)がその人(本物)であると認識をしてしまうのではないか? (大熊さんのことを闇川さんだと思ったように)ということだった。
そのさゆりちゃんの説明に(もちろんなぜそうなったのかの原因や理由はわからないけど)久美子は納得した。
「でも、さゆりちゃん。一つだけ聞いてもいい?」久美子が言う。
こくんとさゆりちゃんがうなずいた。
「じゃあ、さゆりちゃんや信くんはさ、あの真っ暗なもやもやの闇のことを、闇川さんっていう一人の人間として、全然変だとは思わなくて、今でもちゃんと、そう思っているってことだよね?」久美子は言う。
その言葉を聞いて二人(さゆりちゃんと信くん)は顔と顔を見合わせた。
それから二人は久美子を見た。
そして信くんは呆れた顔をして「真っ暗なもやもやの闇? なにいってるんだよ? 闇川さんはどこからどう見ても『普通の人間』だっただろ?」と信くんは言った。
「え?」その言葉を聞いて久美子はすごくびっくりした。
そして久美子はすぐにさゆりちゃんを見た。
さゆりちゃんは全てを理解したような顔をして、久美子に向かってこくんと小さくうなずいた。
え? あれが二人には普通の人間に見ているの? どういうこと? もしかして本当に闇川さんは闇川さんなのかな? あれ? おかしいな? もしかして『おかしくなったのは世界のほうじゃなくて、私自身』なんじゃないのかな?
えっと、……あれ?
久美子はまた混乱する。
そんな久美子を見て、さゆりはそっとその小さな白い手を久美子の手の甲の上においた。
冷たいさゆりちゃんの手の感覚がそこから久美子の中に伝わってくる。
「……さゆりちゃん」不安そうな顔をして久美子が言う。
「大丈夫。今はとりあえず余計なことは考えなくていい。私たちがちゃんと久美子ちゃんに協力するから」とさゆりちゃんは久美子に言った。
「ね、そうだよね。如月くん」
さゆりは信くんの顔を見る。
「まあ、正直、やみやみのことはよくわからないけどさ、三島がなにかに困っているということはその顔を見ればよくわかるよ。だから、もちろん俺も協力する」そう言って信くんは、安心しろよ、三島。とでもいいたげなたくましい表情をしてにっこりと久美子を見て笑った。
そんな二人の顔を見て、三島久美子は本当に救われたような気がした。
「……さゆりちゃん。信くん。二人とも、どうもありがとう」久美子は言った。(それは久美子の心からの言葉だった)
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