I WANT TO HOLD YOUR HAND

雛形 絢尊

第1話



Oh yeah, I'll tell you something

(今から僕の気持ちを言うよ)




※The Beatles

I Want to Hold Your Handから抜粋





彼女だ。きっと彼女が運命の人だ。

私は彼女のことを何一つ知らない。

私はなんてことを頭に浮かべながら

交差点を渡る。

片手に普段は買わない棒付きの

アイスを持ちながら。

このソーダ・アイスが当たりでも

ハズレでもどうでもいい。

私は彼女と、いや、運命の人と。

側から見れば生意気にも見える

幸せを味わってみたいのだ。

ただでも暑い夏だ。

日々最高気温を達成している。

交差点の中腹あたり、

この四角形のような空間で

私は食べていたソーダ・アイスを丸ごと一つ

落としてしまったのだ。

滑り落ちるかのように青いソーダ・アイスは

私の目の前で無惨な姿になった。


彼女だ。きっと彼女が運命の人だ。

やはり彼女のことを思うと胸が高揚する。

私はなんてことを頭に浮かべながら

交差点を渡る。

片手に普段は買わない棒付きの

ソーダ・アイスを持ちながら。

彼女に好きな人がいたら。

なんて思うと私はとことん考えてしまう。

いや、いやいや。彼女に彼氏なんていない。

でも私のような人間に彼女なんて、

私は足をとにかく進める。

交差点の中腹あたりを超えた。

私にとって彼女は、彼女にとって私は、

そう思っているとまたも

ソーダ・アイスが滑り落ちた。

見るも無惨に散っていった。


彼女だ。きっと彼女が運命の人だ。

彼女のことをずっと考えていた!!

とても胸が苦しい。

呼吸困難のように私は交差点を渡る。

思い切って、それがいい。

この手を握りしめてくれないか。

もう落とすものもない、

もう気落とす時間なんてない。

交差点の向こう側、

彼女は私を待っているようだ。

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I WANT TO HOLD YOUR HAND 雛形 絢尊 @kensonhina

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