第11話

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


女 Side






ゆっくりと目を開けると、知らない天井だった。少し右を向くと、窓から青い空が見える。







起き上がろうとして、やめた。







気力がわかない。何もしたくない。

私は、まだ生きてるのだ。








昨晩の記憶を手繰り寄せる。




男に横抱きにされ、そのまま歩いて森の入り口に向かっていると感じたところで意識が途切れた。


それからの記憶はない。

……ここは、どこなのだろうか。







「休んどけ」








左方向から声が聞こえた。

それでも私は、窓から見える小さな空を眺めていた。







ーーーーギシッ









「おい」









いつの間に回り込んだのか。

男が私が見ているベッドの右側に座った。







こちらを見る瞳は黒。

憂い気な瞳は、吸い込まれそうになりそうな感じがする。







「起き上がれるな。なんでもいいから食え」








やはり断定的な口調でこちらに語りかけて、座ったままこちらに体を寄せてくる。


でも私は、視線を合わさないまま空を見ていた。






この窓から見える小さな窓は、窓を開けて身を乗り出して見れば、どこまでも広がる大きな空なのだ。


人もそう。

夢に向かって自由に羽ばたける、どこまでもいける可能性がある。


それなのに、この窓枠のように、ヒトに囲われ、小さな世界でしか生きることのできない、決められた生を進むしかなかった自分。








やっと解放されると思ったのに、今度は男に全て拾われた。


命も、未来も。











捨てたのに、拾われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る