第8話

「おかえりなさい歩。見てこれ、裕樹の絵が選挙関連のポスターになるのよ!」



母は帰宅直後の歩に僕の賞状を見せた。



「……なにこれ、クソダセェ」



歩は母の手にある僕の賞状を一瞥して、吐き捨てるようにそう言った。


「ちょっと歩!?なんてこと言うの!」


「そのまんまだけど。選挙のポスター?所詮地域の選管の奴らが選んだだけのやつだろ。全国区の大会とかで獲った賞でもねぇ。そんなん見せびらかされても…」


「そんなこと言わないの!裕樹だって頑張ったのよ?」


「へぇー。よかったじゃん唯一の取り柄がやっと認められて」


「あ、ありがと…」


「でもさあ?」



歩が母の手から僕の賞状を取り上げた。


そして賞状をじっと読むように目を細めた。




「こんな自己満レベルの賞状、絶対いらねえだろ」



ビリビリと紙が破れる音と共に歩の手から落ちてくるのは、賞状の破片だった。

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