第3話

僕が彼女を作らない理由。


それは、自分の事で精一杯であるということだけではない。




「裕樹!!今回のテスト、赤点回避したの何教科だった?」



同じクラスで幼馴染の舞香まいかが放課と同時に僕に話しかけてきた。



「今回は全科目回避したよ……」



僕は席の前に立つ舞香を押しのけて、リュックを背負った。



「すごいじゃん裕樹!!前回は7科目取って怒られてたのに!」


舞香は僕を追いかけるように明るい声を出す。


「…もう怒られたくないから、前よりはまともに勉強しただけだよ…」


「本気で勉強しようと思ったのも偉いし、それが結果に繋がってるのがすごいよ!」




キラキラした目を輝かせ、ボブカットの艶のある黒髪を揺らしながら舞香は言う。


「……ありがと……」



僕はまた舞香から目を離し、まだ何か言いたそうな舞香を無視して教室から出た。


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