いらないものを、僕にくれる兄

@sakusaku16868

第1話

裕樹ゆうき、これいらないからあげるよ」


「…ありがとうお兄ちゃん」



素直に礼を言って、小学4年生の僕は、双子の兄である歩から渡された壊れかけの玩具を貰った。



「お前は俺のいらなくなったものをもらってればいいんだよ!な?裕樹?」


真っ黒な艶のある髪に透き通るような肌。


まるでテレビから出てきたかのような美しい顔をした兄は、僕に向かって意地悪な笑顔を向けて言う。


「そうだねお兄ちゃん」


まるで機械のように言葉を発する僕の目には、リビングに飾られた数々の賞状やトロフィーが映る。


その名前欄には、全て「高橋歩たかはしあゆむ」と書かれている。



お兄ちゃんは、毎日のように僕に向けてくる意地悪な顔ですら、思わず息を止めて見てしまうほど美しい。




それとは対象的に何もかもが平凡な僕は、ただ黙って兄からもらう「いらなくなったもの」を受け取るしかなかったのだ。

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