第18話 オリバーの帰還
♦♢
「オリバー様! お帰りなさいませ」
満面の笑みで出迎えた
「ご無事で本当に良かった。どれほど心配したか……」
「大丈夫ですよ。アレクサンダー皇帝陛下が優秀な部下をお貸しくださったおかげで、無事に帰ることができました」
「彼らが今回の事件の元凶ですか? お兄様が謁見の間で、その者たちに会うとおっしゃっていましたわ。それにしても皇家の
皇女殿下の感謝の言葉に、皇家の
フリートウッド王国で自分が辛い思いをしてきたと感じていたことが、
「さぁ、こちらにいらっしゃい。辛い経験をしたことでしょう。でも、もう大丈夫。これからは私があなたたちを守るわ。ローマムア帝国はあなたたちを歓迎します」
その中にラクエルの姿を見つけたマドリンは、
「マドリン! 生きていてくれたのね。元気そうで安心したわ」
「うん……でも私、ひどい誤解をしていたの。実は皇女様に毒をかけるお手伝いをしてしまったの……姉さんを連れ去ったのはローマムア帝国の騎士だと信じてたから……」
「違うわ。私を攫ったのはスペイニ国王の部下だったの。城の地下に閉じ込められていたのよ。でも、どうして皇女様に毒を?」
「スペイニ国の人たちが、アレクサンダー皇帝が皇女様を宝物のように大切にしているから、皇女様を失えば自分たちの苦しみを知るだろうって……私たちはアレクサンダー皇帝が悪人だと信じていたから」
「……なんてことを。皇女様、どうかマドリンの罪を私に背負わせてください。この子はまだ幼く、十分な教育も受けておりません。人の言葉をそのまま信じただけなのです。許していただけるとは思っておりません。ただ、この子の代わりに罰をお受けいたします」
「お兄様は私が無事であっても、犯罪に加担した者を許すべきではないとおっしゃっています。でも、私はマドリンを許します。スペイニ国の民たちは、みんな被害者ですもの」
「だったら、余たちのことも許してくれるよう、アレクサンダーに頼んでくれんか? ぐへっ……」
「皇女殿下に無礼を働くな! お前のような腐れ外道が話しかけていいお方ではない!」
皇家の
「美しい……さすが皇女様だ。夢の中だけでも、あんたを……」
その下卑た言葉に、
「まったく、愚かで低俗で、恥知らずな王だな。
♦♢アレクサンダーside
アレクサンダーは謁見の間で、オリバーや皇家の
――私の妹を拉致しようとしただと? 奴隷にして自分のものにする、などと言い放っただと? 許さん! 断じて、許さん。我が国の騎士を騙り自国の民たちを迫害したことの罪も重いが、さきほどの『夢のなかだけでもあんたを……』の発言も呆れるばかりだ。
「お前たちは迷うことなく極刑だ。清々しいほどの悪人だからな。刑を行う場はローマムア帝国のコロッセウムとする。猛獣との戦いは見世物としても人気があるのだよ。スペイニ国の民も招待しよう。お前らの最期をみな楽しみにしているだろうからな」
「猛獣と戦う? 嘘だろう? 余は人と剣を交えたこともないんだぞ。無理だ、とても戦えない」
「ふむ、可哀想になぁーー。ローマムア帝国の騎士団でしばらくしごかれろ。少しはライオン相手に戦えるかもしれないぞ」
スペイニ国王はへなへなと床に座り込んだ。
「頼むから斬首台や毒杯にしてくれ! ライオンと戦うなんて……無理だ」
「戦うのはライオンだけじゃないぞ。熊とトラ、最近ではカンガルーだな。あぁ、そうしよう。カンガルーは後ろ足を使ったキックが最大の武器なのだよ。まずはカンガルーから散々蹴られた後、ライオンと熊に可愛がってもらえ!」
「嘘だろう? カンガルー、ライオン、熊? 私をエサにするのか?」
スペイニ国王は絶望した。死を願うほどの罰、とはこのことだったのか? 猛獣に骨を砕かれる音をみずから聞きながら絶命する……
「まさか。カンガルーやライオンたちはとてもグルメさ。お前のような汚物は食べない。まぁ、じゃれて遊ぶというかんじかな。最期に動物と戯れることができるんだ。私に感謝しろよ」
アレクサンダーはにっこりと笑いかけたのだった。
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