4. エロフォルダより見せられない

「ケモナー? それとも犬願望?」

「いきなりツッコミ入れてくるの止めない?」

「じゃあ逐一イジられるのと黙って読まれるの、どっちがいい?」

「……不安になるから何か言ってください」

「君のそういう正直なところが好きだよ。しっかしコレはまた、悲惨だねえ」

「社会人になって一番キツかった時期に、衝動で書き始めたからなあ……。それでもめちゃくちゃ手直しして、かなりマシになったんだけど」

「面白さ追求した結果、さらに悲惨な内容になった経緯が見える見える……」

「お前のそういう察しの良さが好きだよ。他から感想貰ってなければ致命傷だった」






「シンプルな詠唱してるけど、実はコレ元々長めのパターンとかあっただろう」

「ハァー……ッ! ハァー……ッ!」

「世界観的には一般技術として運用する関係上、起動方式が簡略化されたんだろうけど……。その結果が『術式起動ネタ被り』とは悲しいねえ」

「マジで流行ってるの知らなかったんだよ……。映画見に行って頭抱えて、でも調べたら昔っから似たようなネタ幾らでもあるからまあいいや……って」

「気にし始めたら創作なんて出来っこないだろうからねえ、同情はするよ。それでFateともホライゾンともダブルクロスとも色々被るのは吹っ切ったわけだ」

「ハァー……ッ! ハァー……ッ!」






「なるほどね。君コレ、時期的にHF見に行った衝動のまま書き上げただろう」

「おっと心は硝子だぞ」

「固有結界でも展開し始めるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。ああでも、実質似たようなもんか……。既存法則書き換え系だもんなあ。コレもしかして大ラスは――」

「待て待て待てソレ見抜かれたらマジで心折れる! 一応あと九冊分は書けるくらいのネタ抱えてるんだぞ! やめてくださいお願いします」

「ネタあるならさっさと書けばいいのに……。ああそうか、一冊分書けばあとはいくらでも書けるから、他のネタ優先して形にしてるだけなのか。君はそういうヤツだよね」

「趣味優先だとなあ……。というわけで、次の一作どうぞ」

「ここまでイジられて次勧められるのか。血潮が鉄過ぎる……」






「ネタはともかくとして、自分で書いちゃった?」

「はい」

「ロリババアを?」

「……はい」

「君の理想のヒロイン像を?」

「世間が、世間が悪いんですよ。どいつもこいつも、ロリババアをネタ枠扱いしてメインヒロインにしてくれないから、俺の二次元遍歴が敗北の歴史に塗り潰されて……」

「ロリコン拗らせた原因はそこかあ……。永遠娘だと確かにエロ供給しか望めないもんね」

「純愛は有難いんだけど、なにぶん薄さが。クッソ可愛いロリババアに尊い物語があっても、精々二話分くらいしか続かない……!」

「それで……自分で書いちゃったと」

「はい」






「それでも厨二を書くのはやめないんだね」

「しっ、仕方ないだろ! ロリババアは強くてなんぼだろ!?」

「君、本当に強い女好きなんだねえ……。いや、正確には人の強さか? まあ全面的に同意するけど、作者側からのメタ発言があるとなあ。正直冷める……」

「作者本人をイジっておいて言い草過ぎねえか!?」

「あと一つ言わせてもらうけど、純粋なラブコメにバトルとかファンタジーとか、過剰な非日常非現実要素は本来邪魔だと思うよ。今回に限って言えば、上手いこと噛み合わさってるから、主題の恋愛要素が薄まったりはしてないようだけど」

「急にマジメな品評やめろ。貴重なご意見ありがとうございます。精進します」

「普通の現実世界を舞台にした物語も書いた方がいい。ファンタジーとかSFとか火力強めの設定ありきで話作ってばかりいると、クセになって抜けなくなるからね」

「いや、マジでネタのストックがソレ系ばかりで。頑張ります……」






「なるほどねえ。トウリ君、コレってさ――」

「読むな読むな読むな! 俺の人間性ありきで裏読みするな!」

「全作品共通で適用できる世界基盤の設定とか――」

「何でそこまで見抜けるんだよ! パッと見何の繋がりも無いだろ!?」

「いや、僕だったらそうするかなあって」

「メタ読みが異次元過ぎる――! 作者だけを殺す機械か!?」

「ここまで合理的な構成してるとねえ。理系脳同士は話が早くていいね」

「クリエイター的には過剰な理解者は敵なんだなって始めて気付けたよ、ありがとう。それじゃあ気を取り直して最後の一本行ってみようか」

拗らせ創作者バーサーカー怖いなー……。何度殺されても止まらないよコイツ……」






「ケモ、ロリ、ババアと来て、今度は男の娘かあ。このホモ野郎……」

「なんだァ……? てめェ……」

「どうせ女装男子、TS、メスショタ、ふたなり、ノンケでも構わず食えるんだろう?(指クルクル) ……ロリコンでホモなんて死ねばいいのに」

「ぐうの音も出ない正論やめろ。な、なんだその目はマジの軽蔑すんな心が折れる! べ、別に良いだろうが誰にも迷惑かけてないんだからよお!」

「本当に? 本当に何もやってない?」

「やってたら今頃シャバに居ねえよ!」

「ブタ箱にぶち込まれる具体的な想定はしたと。コレ通報した方が世のためじゃないか?」

「残念だったなあ、現代に犯罪者予備軍を裁く法はねえんだわ」

「それじゃ公安局からドミネーター借りてくるね」

「やめろやめろやめろ! どうせ俺の犯罪係数はゼロだよ!」

「確信犯まで自称できると。無敵かコイツ?」






「……うーん」

「どうした? え、何なの、急に押し入れ漁り始めて。ちょっとサエさん?」

「いやちょっとね。ああ、あったあった。ハッカドールアニメBD、ボク姫PROJECT、女装山脈……、オトメ*ドメインもか」

「やめて?」

「君、極力物理で持たない主義って言ったよね。何か申し開きは?(テーブルに並べつつ)」

「ないです」

「視線が抱き枕カバーの収納ボックスに流れたね」

「飛鳥湊くんは永遠の版権キャラ最萌えです。あの可愛さは全世界に知らしめるべき」

「正直でよろしい。トウリ君はプライドとか節操とかどこに捨ててきちゃったのかな?」

「『可愛い』に性別も年齢も種族も媒体も関係無いッッッ!」

「君の創作物が全てを物語っているのが最悪過ぎる……」

「まあ少なくとも、俺的に現時点の無差別級最萌えはサエだよ」

「だからねえ! そういうところだって言ってるんだよ君はぁ!?」

「ところでオトメ*ドメインの続編はまだですか」

「君この流れでソレは僕じゃなかったら絞め殺してるところだからね!?」

「FDでも良いんだけど。美結ちゃんルートやりたい」

「知らないよ。死ねよもう」






「ファンタジー、SF、そして厨二……。全部同じじゃないですか」

「ぜ、全然違いま……ちが……っ!」

「まーた一般ウケしないネタで逆張りしおってからに。火力設定抜き以前に、これだけ書けるんだから素直に王道やりなよ。ワンチャンあるかもしれないよ?」

「えっ?」

「えっ?」

「……いやゴメン、ちょっと待って。今「王道を書け」って言った?」

「言ったけど、それが?」

「……え? あれ、えと、俺いつも……、あれ?」

「まさか君、自分が書いてると……?」

「いや待て待て待て、だって、だってさ!? そりゃ確かにいっつも変な要素は入れるけど、物語自体はキチンと熱めの起承転結に……あっ、『変な要素』!?」

「シナリオラインがどうだろうが、ニッチジャンルの時点で王道じゃないんだよなあ……」

「え、じゃあちょっと待って。次に考えてた『祠ミームと巫女さんラブコメ系』はコレ企画段階からダメだとして、その次の『勇者と淫魔の箱庭ぶっ壊し系』もダメだとして、さらに次の『ザコ精霊使いとザコ精霊(三頭身水精)のポケモンデジモン学園系』は!?」

「ダメみたいですね……。まずはキャラを王道にしなさいよ」

「――(宇宙猫)」

「オタク君の基準はガバガバ。逆張りの末路」

「ゴメン宇宙の裏側が見えかけたから思考止めるわ――よし復帰した。『私は此処に居る』」

「外なる者直視しても正気保ってそうだなあこのメンタルゾンビ。もう発狂済みでは?」

「否定はしない。さあどんな酷い罵倒も受けて立つぞ! 王道うんぬん以外でな!」

「敢えて蒸し返して徹底的に壊してやりたくなるねえ。……まあ、色々な意味で実に濃い十数時間だったよ。完走した感想とでも洒落込もうか」

「親父の激ウマギャグやめろ。……お手柔らかにお願いします」







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