第3.5話 くだらない感情

私の名前は安月あづき みどり


普通の高1って言いたいところだけど、そうはいかないんだ。


私は同性愛者で、俗にいうレズビアンってやつだ。


昨日...告白したんだけど、失敗したんだ...

失敗するってことは大体予想はついてたんだけどね。


それでも、諦めきれなかった。

私だって、恋人がほしい。

普通のカップルのように、一緒にデートしたり、勉強したり、遊んだり...


皆に優しく明るく接してるのも、好きになってもらうため取り繕ってるだけ。



なんで、恋愛対象が普通と違うだけで、普通になれないの?

なんで、同じ女の子が好きなだけで、周りと一緒の恋愛は出来ないの?

後何十年経ったら、受け入れてくれるんだろう...


もう、諦めるしか私に残された選択はないんだよ...




翌日。

私は昨日の事ばかり考えていたため、よく眠れなかった。


「安月さん、安月さん!大丈夫ですか?」


クラスの女子が話しかけてきた。

「はっ!すみません!?私としたことが...昨日よく眠れなくて」

「そうなんですね、体調を崩さず気を付けてくださいね。そういえば、これをお願いできますかね?」

「はい、後でやっておきますね」


 みんなに頼りにされてるって分かってるのに、どうも嬉しくなれない。

今までは、みんなに好きになってもらえるためならいくらでも頑張れたけど...

所詮、私なんて『なんでもしてくれるいい人』くらいにしか思われてないんでしょ...


もう、YESマンやめようかな、精神的にも疲れてきたし。



そんな時、クラスの男子の話し声が聞こえてきた。


『あー俺もこの町の美人と会ってみてえ』

『美人なんてそうそういるわけないだろ笑』

『違うって!この投稿見てみなよ!ガチで俺達が住んでる町だから!』


この町に美人がいるというのは、どうやら、Twitterの投稿だったらしい。

試しにTwitterを開いてみたら、トップページに出てきた。


『こんな人と付き合える現実が良かった』

コメント数は439、ハートの数は110万。


数秒くらいの動画だった。見てみたら、そこには物凄い美人がいた。


長い髪、大きめのベレー帽、長めのスカート、大きめのバッグ、そして、とても綺麗な顔。美人そのものだった。


謎の既視感があると思ったら、私の住んでる市、別府市にある公園じゃないか。


本当に、本当に美人がいるの!?

そうと決まれば早速、今日から探し出すしかない!!!


『今話題の美人に絶対会ってやる

これからは毎日公園に行って見つけ出す』


調子づいて、ついこんな投稿をしてしまった。



そして放課後。学校終わりに急いであの公園まで行った。


まさかとは思ったけど、公園近くは人がいつもより多くいた。


多分あの美人を探すためだと思うけど、こんなに集まるとは。

ネットの影響力って恐ろしい。



じゃ、せっかく来たことだし探してみるか!


公園にはいないから、公園付近の場所も探してみよう!



一時間後


 全然見つからないなあ...ま、まあ初日だからね!一週間ぐらい探してれば見つかるでしょ!多分


今日はもう引き上げることにしよう。

これから毎日、放課後に一時間くらい探してみるかあ。


部活?そんなの入ってないよ。みんなに頼られて面倒なことになるだけだし。

入ってないから運動にはなるかもしれないけど。


用はないし、今日は帰るか



一週間後


あーもう全然見つかんないじゃん!?本当にいるんだよね!?


あと一か月で見つかんなかったら諦めるしかないのかな...

人もかなり減ってきてるし、いないって判断した方がいいのかも...


一時間くらいたったと思うし、帰るとするか



さらに二週間後


やっぱ今日もダメだったよね


人もいなくなってるし、もう普通の公園に戻っている。


Twitterで『目撃情報をください』って言ったけど、当然のごとく来なかった。


これじゃあ、一体何のために来ていたんだろう...時間の無駄だったじゃん!?今更だけど。


疲れたし、そこら辺のベンチに座って動画でも見ているか。

YouTubeを開いて早々、あの美人のショート動画が流れてきた。


そりゃああんなに注目されてるんだし、動画にはされてるだろうね。



あれ、あそこにいる人...

長い髪、大きめのベレー帽、長めのスカート、大きめのバッグ、そして、とても綺麗な顔立ち。完全にあの美人と同じじゃない!?



「あ!!?」

驚いてつい声に出ちゃったのはともかく、ついに会えたんだ!半分無理だと思ってのに!

やっぱり私の行動は正しかったんだ!無駄じゃなかったんだ!



あ...でもなんて話かければいいんだろう?

当然「ネットで晒されてたんで見に来ました!」とは言えないし、そこまでは考えてなかった...


あ、逆に晒されていることを話すのは?

「すみません、あなた今晒されてますけど知っていますか?」

とかでもいいんじゃない?知らなかったら教えてあげれたし!


でも逆にお節介になるかもしれないし...

あーもう!せっかく来たのにそんなこと考えてちゃダメダメ!


別に、これで最後のつもりだから。もう新しい恋人なんて作る気はないから。

嫌になられてもいい。晒されてもいい。いつまでもうじうじしてても何の成果もないから。


だから、最後くらいはあの人と喋って...できれば友達になりたい。


そう思って、話かけてみた。


「すみません!ネットで話題になっている人であっていますかね...?」

あー、遂に話しちゃったよ。


「あの...すみません、何のことでしょうか?」


良かった、あの人は知らなかったみたいだ。


「知らなかったんですか!?今あなたがTwitterでめちゃくちゃ有名になってるんですよ!?」

「え...?私、Twitterでなんかした覚えないんですけど...」

「勝手に晒されてたっぽいですよ...」

「まじですか!?ネットって怖いですね...あと、詳しく話をしたいので近くのカフェに行きませんか?」


えええ!?嘘でしょ!?相手から誘ってきた!

これはもしかして、これ友達になれるチャンス...?


いやいや、自分が晒されてることを確認したいだろうし、ゆっくり話を聞きたいだけかもよ...


まあ、話せるってだけ全然良いし、とりまいってみよ!


「とりあえずー...その例の投稿を見せてくれませんか?」

「いいですよ!これですね」


 例の投稿は、最初に見た時よりも反応が多くなっている。

そりゃあ、三週間もたったんだし、少しは多くなってるはず。


「なるほど...めちゃくちゃ知れ渡ってますね...」

「そうですよ(泣)一体、誰がこんなことを...」

「そうですよね...そういえばあなたはわざわざこれを伝えに来てくれたのですか?」

「そうです!後で気づいて大変なことになってるよりも、今気づいている方がいいと思いましたので...迷惑でしたか...?」

「全然!わざわざありがとうございます!」


 よし!この人が優しい人で良かった!

せっかくだし、名前も聞けないかなあ

「役に立てたなら嬉しいです!そういえば、まだ名前を聞いてなかったので聞いてもいですか?」


「先にあなたの名前を教えていただけますか?」

「いいですよ!私は私は安月あづきみどりですよ!色の方の緑じゃないですよ!」

「いい名前ですね!私の名前は、陽葵ひよりです!」

「ひより...!いい名前ですね!私のことは気軽に慧って呼んでください!」

「分かりました!み、慧さん!私の事はひよりって呼んでください!」


すごい、ひよりってイメージと合ってる!清楚系って感じの人だからかな!

ここまで来たんだし、自己紹介もいいよね!


「はい!あ、自己紹介しません?名前以外の!」

「私もそれ言おうと思ってましたー!じゃあ...っ慧さん!からお願いします!」

「はーい!高校一年生、誕生日は10月11日!15歳!趣味は、絵を描くこと!そんな上手くはないけどね!」

「そうなんですね!実際に書いた絵、見てみたいです!」

「あんまり、期待はしない方が良いと思いますけど、いつか描いてみます!」


私はあくまで趣味的に絵を描いていたけど、最近はあんま絵を描いてなかったなあ

...久しぶりに描いてみようかな 気が向いたらだけど!


「次は、私の自己紹介ですね!高校一年生、誕生日は5月8日、16歳。趣味は音楽鑑賞、コンプレックスは低音な声ですかね」

「低音の声私的には、良いと思うよ!個性的でいいしね!」


ひよりさんの声、これはこれで普通に可愛くない...?

性格とのギャップも可愛くていい!


「ありがとうございます!コンプレックスですら褒めてくれるなんて...」

「いえいえ!」


そういえば、さっきからひよりさんは周りを見ている気がするけど、気のせい?

「そういえば、さっきから周りを見てる気がしますが、嫌でしたか?」

「嫌と言うか、なんか視線を感じる気がするんだよね...」

「例の投稿のせいですかね...どっか別な場所に行きますか?」

「できれば、そうしたいです」


 別の場所、か...正直どこに行っても視線が向くと思うけど...

もうこれは、私の家に行くのも...ありかも...?


いやいやいや、流石にあったばかりの人を家に入れるなんて、怪しすぎるでしょ!?


まあー...家族は今出張でいないし...ちょうどいいタイミング?


一応言ってみるか...

「分かりました!じゃあ、私の家なんかどうですかね?」


「いや、流石に会ってから一日も経ってない人の家は行けませんよ...」

「でも、ひよりさんは既に有名じゃないですか!?どこ行っても、例の美女って気づかれると思いますよ...だから、ひよりさんのためにも、私の家はどうかな!なんて...」


あーやっぱダメかあ...流石のひよりさんでもこれは無理よね...


「ていうか、親は許可してくれるんですか...?」

「今親出張行ってるんで家には居ませんよ!」

「なるほど...にしても本当にいいんですか?」

「いいんですよ!ていうか、逆に来てほしいです!」


ん?

もしかして、今、いい感じ?

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