女装したら、晒されました。
高志保 しほ
第1話 俺の女装が意外と美人だった
俺の名前は
友達もそれほど多いというわけではないし、陰キャでも陽キャでもない。
運動神経はそれほど良くないし、成績も中の上くらいだ。
好きな人だっている。それは、同じクラスの
見た目は可愛い系女子で、性格は温厚だ。一番いいところは、良くとるオーバーリアクションだ。天然って感じで、そこが可愛い。
そして、安月さんにこれから告白するつもりだ。
今日告白するつもりはないが、安月さんに
「明日、教室に残っていてほしい」
と言って、告白に誘うつもりだ。
かといって、告白が成功する確証はない。
第一、俺は年齢=彼女いない歴の男だ。恋愛経験なんてあるわけない。
それに、俺と安月さんは同じクラスだが、美化委員会以外での関わりは特にない。
そんなに好意を寄せていないし、関わりもそんなにない人から告白されたとしたら、俺は断ると思う。
だけど、俺は告白すると決めたんだ。
高校生だし、そろそろ彼女くらい欲しいと思っている。
それに、彼女がいればとにかく生活が楽しくなるって思っている。
だから、一か八かで告白することにするんだ。
そうして、放課後になって、みんな教室からいなくなっていった。
安月さんに話しかけるあとちょっとのところで、安月さんは何かに気づいたように走り去っていった。
俺は安月さんを追いかけた。しかし、一分もかかるわけじゃなかった。
安月さんが向かったのは、二年一組と書かれた教室だった。
気付かれないように、覗いてみる。
教室には、安月さんと他の女子がいた。おそらく、このクラスの女子だろう。
そうして、安月さんは、こう言った。
「今日は忙しい中待っていてくれてありがとうございます。」
「早速ですが...伝えたいことがあります。」
「実は私...あなたのことが好きなんです。」
「出来ればでいいので...付き合ってほしいです。」
「絶対付き合ってとは...言いません。けど、どうしてもあなたに伝えてみたかったんです...。」
ファッ?
俺は一瞬頭が混乱した。
状況的に考えて、告白してるのは分かる。
でも、それが女の子だったんだ....
俺が混乱していると、相手の女子はすかさず言った。
「ごめんなさい、私女の子は恋愛的には好きじゃないんですよね」
「それに、実は私彼氏がいるんです」
「そうなんですか!??そうと知らずに告白してすみません...迷惑だってだろうに」
「いや、知らなかったのはしょうがいと思いますし...こちらこそ要望に応えられなくてすみません。私はもう行きますね」
「分かりました」
そう言って、相手は帰っていった。気づかれないように俺は隠れた。
少し経った後、安月さんも帰っていった。
俺も帰ることにした。
とりあえず、冷静に今までのことをまとめることにした。
まずは、俺が安月さんに告白をしようとした。
そしたら、安月さんが告白相手の方に行った。
そうして、安月さんは告白をしたが、断られた。
そして今帰っていったというわけだ。
正直言って、まだ安月さんが多分同性愛者だということに実感が沸かない。
全然そうゆうイメージなかったし、男女平等に接していたはずだ。
ということは...今後絶対安月さんは俺と付き合ってはくれないはずだ。だって、俺は男だ。心は女というわけではない。
...もう諦めるしかないのか
このことを忘れるために、家に帰ってからは中間テストのための勉強をすることにした。
...ただ、失恋は中々忘れられるものではない。
だから、ずっと安月さんのことを考えてしまう。もう無理って分かっているのに。
逆に、失恋してそれをすぐ忘れられる人なんてこの世にいるのか?
そんなことを考えていたら、脳裏にある考えが浮かんできた。
そうだ、女性になりきってみればいいんじゃないか?
なりきるって言っても...女装すればいいのか?
でも...普通の男子高校生が女装ってなんかキモくね?
それも...好きな子のためにってさあ...
まあでも、やってみない価値はないっちゃないし、実際女装してみればどんな感じか気になるし、やってみるか?
そう思い、中間テストの勉強なんてすっぽかして女装をすることになった。
まずは通販で女装セットを買うことにした。
実際にお店で買ったら変な目で見られる以外ないからな。
もし同級生が見てたら...学校生活が終わっちまう。
次に、メイクをしてみることにした。
親のメイク道具を使うわけにはいけないし、これも通販で買うことにした。
三日後、女装セットとメイク道具が届いた。
今日は特に予定はなかったため、人がいない多目的トイレでメイクと女装をしてみた。
流石に家でやるとバレる可能性があるため、止むを得ずここでやることになった。
女装セットは後にし、先にメイクをしてみることにした。
ネットで女装の際のメイク方法を見て、やってみることにした。
「まずは下準備で、顔を綺麗に洗うのか、次に、肌に合ったファンデーションを塗って、その後に...」
メイクをしてみたけど、予想以上に時間がかかってしまった。
女性って大変なんだな、と実感していた。
最後に女装セットを着て、女装完了だ。
正直言って、美人なのかは分からない。
ただ、なるべく安月さんの目に入りやすいようなメイクにした。
ついでにトイレを済ませておいて、外に出てみた。
いつものように適当に歩いて、昼食はファミレスで食べた。
途中、複数人の視線を感じたけど、無視することにした。
女装失敗していてそれで目立っていたらどうしようかと考えていたが、今はいつも通り過ごすことだけに集中した。
...ん?もうこんな時間か...
今日は一段と疲れたため公園のベンチで寝てしまっていたようだ。
人も少なくなってきたし、最初の多目的トイレでメイクを落として元の服装に着替えることにした。
翌日。女装をしていたことを隠していつも通り学校に行った。
安月さんは学校に来てたが、少し悲しいような切ないような表情をしていた。
そんな時、俺の友達が話しかけてきた。ここでは林と呼ぶことにしよう。
「あー俺もこの町の美人と会ってみてえ」
「美人なんてそうそういるわけないだろ笑」
「違うって!この投稿見てみなよ!ガチで俺達が住んでる町だから!」
実は、俺の学校はスマホを持ってきていいんだ。だから、休み時間はみんなスマホをいじってる。
そうして林が見せてきたのは、Twitterの投稿だった。
『こんな人と付き合える現実が良かった』
コメント数は439、ハートの数は110万。めっちゃ伸びている投稿だった。
そして、数秒の動画があったため確認してみることに。
...え?
待って待って、投稿日は昨日、それに昨日行ったところだし...
何より俺の女装姿が映っている。
コメントを見てみよう..。
『こんな美人に生まれたかった』
『美人だしスタイルいいし可愛い』
『ここって大分県別府市じゃね?』
『年齢は十代後半くらい?』
などと、特定のコメントもあって、背筋がゾッとした。
「ほら、完全に俺達の住んでる所だろ!実際特定コメントもあって当たってるし!」
「ま、まあそうだな...でも、ここら辺に住んでるとは限らないし、会える確率は少ないかもしれないぞ!?」
「まあまあいいじゃないか!誰だって美人に会ったら嬉しくなるだろ?」
「それはそうだけど...」
「俺、今日いないか探してくるわ!お前も行く?」
「いや...やめとくわ」
「行かないのかよー!もったいねえなw」
やばいな...このままだといつかバレちゃうかもしれねえ...
女装はもうやめた方がいいのか?
そんな時、ふと安月さんのスマホの画面が見えた。
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